教員紹介

つじ りゅうへい

辻 竜平

社会学 教授

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2.授業関係

社会ネットワークとインフルエンザの感染

 5月26日(火)の「経験社会学基礎Ⅳ」の授業の講義内容を予定変更し,また人文学部の学生全体にも公開することとして,「社会ネットワークとインフルエンザの感染」という題目で講義を行いました.新型インフルエンザの感染について,対策・政策の話ばかりがニュースで取り上げられ,実は,個体内でのウィルスの振る舞いや,社会ネットワークを介した感染について,その感染と拡散のメカニズムについてよく知られていないのではないかと思うことがあり,そういった科学的な側面についてもきちんと理解してもらうことが必要だろうと考えたからです.
 もちろん,私自身は疫学や生物学の専門家ではありませんので,特に個体内でのウィルスの振る舞いについては,嘘を教えないようにビデオを見せて対応するようにしました.そしてその上で,社会ネットワーク上での感染について,社会ネットワークの専門家として,感染に関わるモデルを最も基礎となるSIRモデルから始め,スモールワールド・ネットワーク上で感染が起こった場合のランダムネットワークの影響,スケールフリー・ネットワーク上で感染が起こった場合のハブの影響といったことについて論じ,結論として,スモールワールド・ネットワーク・モデルに基づいた予測と対策が有効であり,実際にその線に沿った政策が行われようとしていることを指摘しました.(この講義の内容は,基本的には,ダンカン・ワッツの『スモールワールド・ネットワーク』(辻・友知訳)に沿ったものでしたが,講義の準備をする中で,いろいろと気づいたり勉強したりしたこともありました.)
 さらに,やや蛇足ながら,規範論的な問題としては,自由をどこまで制限することが許されるかといった論点について紹介しました.

 さて,講義には,いつもは見なれない顔の人も数人いました.社会学やその関連分野のみならず他分野の学生さんたちも出席してくれていました.実は講義当日の朝,あるメールマガジンにURLが載っていたウェブサイトのインフルエンザ対策の記事を読んで,自然科学の素養のなさそうな評論家が全く箸にも棒にもかからないようなコメントを至極最もらしく論じているのを見て危惧を感じました.文科系の人々は往々にして何となく最もらしいが科学的に根拠のないことを信じてしまったりするものです.しかし,きちんとメカニズムを知った上で政策を講じないと,とんでもない愚かな政策(効果がなかったり,逆効果だったり)が通ってしまったりする危険性があります.少数ではあっても科学的な知識の必要性を感じてくれた学生がいたことは,本当に喜ばしいことでした.
 インフルエンザの感染については,もちろん,疫学や生物学といった自然科学系の諸分野が重要な科学的知見を与えてくれていると思いますが,それが社会ネットワークを通して伝わっていくということから考えると,社会ネットワークの研究者も,ささやかながらその一部に貢献できるのではないかと考えます.私の講義が少しでも役に立ちそうだと感じてもらえたなら,私にとっても大きな喜びです.

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