教員紹介

おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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日本史を学びたい人びとへの読書案内-おおぐし編

歴史学とはどういう学問だろうか?

 今年も進級分野を決める時期となりました。人間情報概論で「歴史学とは何か」を学び,「日本史概論」「世界史概論」で,「日本史」「地域史」そして「世界史」の基礎を学んだうえで,さらに勉強を深めて欲しいと思います。  日本近現代史を勉強したいと思っている皆さんには,以下のものをお勧めします。2年生進級前にぜひ一読して下さると嬉しく思います。なるべく手に入りやすい,値段の安い文庫や新書を選びました。  まずは,「歴史学とはどういう学問か」を教えてくれる良い本として二宮宏之『全体を見る眼と歴史家たち』(平凡社ライブラリー版1995年,初版は1986年)です。近世フランスが対象となりますが,歴史的思考方法について,またその現在について基礎から考えさせてくれる刺戟的な本です。   子どもたちに語りかけた鹿野政直『歴史を学ぶこと』(岩波書店1998年)も良い本です。

戦争を読む

家永三郎『太平洋戦争 第2版』(岩波現代文庫版2002年,初版は1968年・第2版は1986年)   1931年9月18日「満洲事変」から始まる戦争を日本史の領域では「15年戦争」といいます。1937年からの「日中戦争」,1941年からの「アジア太平洋戦争」をあわせて一連の戦争という見方については,アジア史からの問題提起がありますが,その概要を知る基本的な文献です。   家永さんは,教科書訴訟でも有名ですが(家永『教科書裁判』日本評論社1981年),戦争の法的側面への注目,日本を含むアジア諸地域の戦争被害者へのまなざし,短歌や雑誌・新聞記事など民衆が日常的に接することができる記録を用いた叙述など,学ぶところの多い作品です。家永さんの『戦争責任』(岩波現代文庫版2002年)と合わせて読んでみて下さい。

歴史の現場に立ち会う

杉原達『中国人強制連行』(岩波新書2002年)   戦時期日本の労働力動員・強制連行の政策史に関する実証的な研究にのみとどまるものではありません。人びとが「連行」されていった「現場」に視野を凝らして中国の地域社会史を論じ,「連行」とは何よりも「生活の場から切り離される」こと,という問題を印象的に描きます。   同時に,強制連行の記憶を語りつぐ人びととの出逢いの「現場」,企業や市民運動,そして被害者の「和解」と問題を問い続ける営みの「現場」,そこに立ちあう一人の人間としての著者。「歴史」は単に,過去のことを扱う実証的な学問として存在するのではなく,人びとのあいだに現在とともに生きたかたちで存在するもの。そこにどのように向かいあうかを考えさせてくれる作品です。   「日本史」に「とじこもらない」ためにも一読をお勧めします。

人びとの生きる世界に向きあう

石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣病』(講談社文庫新装版2004年,初版は1969年)   熊本・水俣病についての作品です。現代史は「戦争」も大きな論点ですが,「公害」というかたちで問題化した「人間にとって自然と生きることの意味」も大事な論点です。まして水俣病の原因ともなったチッソは戦前以来植民地朝鮮で巨大な利益を挙げていました(日本窒素㈱)。「公害」と「戦争・植民地支配」は関連しているのです。      『苦海浄土』に描かれているのは石牟礼道子さんに映じた水俣病とそれをめぐる患者さんたち,水俣に暮らす人びとや魚たちの世界。この作品を,文学と見るか,ルポルタージュと見るか,議論があるようですが,現代日本の理解にとって不可欠な問題を提起した優れた作品であることに間違いはありません。人びとのある「全的世界」を描いた『苦海浄土 第二部 神々の村』(藤原書店2006年)と合わせて読んでみて下さい。また,土本典昭さんのDVD作品も見て欲しい作品です。

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