2007年11月2日、恒例の秋のフィールドワークの日です。JR松本駅に集合。一路長野市を目指しました。
では、出発!
今回のフィールドワークは、長野市の散策です。案内は長野郷土史研究会の小林竜太郎さんにお願いしました。小林さんは、「歴史の町 長野を紡ぐ会」でも 普段から長野市を案内していらっしゃる方です。今回は、いつもとは違って、小林さんなりの視点で、特に「町と映画館」を中心に案内をお願いしました。長野 市・善光寺界隈を巡見する観点はたくさんありますが、日本近現代史ゼミらしく、路地裏や繁華街、そして閉館したものもふくめて長野の映画館の「立地」を実 感できるコースをお願いしました。
小林さんの案内で長野駅を出発。
ちなみに、長野駅前には「日朝親善 恒久平和」と刻まれた石碑があります。「朝鮮民主主義人民共和国帰国実現記念植樹 在日本朝鮮人総連合会長野 県本部 1960年4月吉日」とあるこの碑は、1958年12月よりはじまった「帰国運動」のなかで建てられました。県内からは1965年までに 2,000人近い人びとが「北朝鮮」に渡りました。現在では、この「帰国運動」「帰国事業」については再検討が始まっています(高崎宗司・朴正鎮編『帰国 運動とは何だったのか』平凡社2005、テッサ・モーリス-スズキ『北朝鮮へのエクソダス』朝日新聞社2007など)。
また、今回は観ることができませんでしたが、「長野空襲慰霊碑」も駅東口にあります(『僕らの街にも戦争があった』)。
「日朝親善 恒久平和」碑。
小林さんの案内で、路地裏を歩いて行きます。繁華街の裏路地や、ところどころ大通りに出るのですが、基本的には普段は通ることのない路地です。そんな場所、思いもかけないかたちで映画館が出現します。
千石劇場。駅前繁華街の路地にあります。裏手はゲームセンターです。
先頃閉館となってしまった中劇。バー・スナックなどの飲屋街を抜けるとあります。
細い路地を歩いていきました。
長野一の繁華街・権堂。アーケードの商店街が「今の権堂」、少し脇道にそれたところに近世の「権堂」があります。その「権堂」には、1897(明 治30)年、長野県内で初めて「活動写真」を上映した千歳座をうけついだ「相生座」があります(ちなみに、この年は日本で初めて「活動写真」が上映された 年でもあります)。「相生座」裏手の細道は、大林宣彦監督「転校生 さよならあなた」のロケにも使われました(『長野』255、2007年秋)。
相生座正面。 相生座の大屋根、裏手より。
相生座前の立て看板(キム キボムくん撮影)。
ちと、ひとやすみ。 美味しいですか?
善光寺門前の藤屋旅館(旅館としての営業は廃止)前にて「お疲れ様!」。
駅前の居酒屋「とくべえ」にてお疲れ会。小林さんを囲んで、「町の記憶」、歴史と日常生活、さまざまな話しで楽しい時間を過ごしました。「学生に 町の見方を体験してもらうツアーができないだろうか。映画館、大型店、コンビニも大切な町の歴史の場所」、「「信州の魅力は自然や文化遺産」」というあり きたりの見方と違う、生活からの視点が提示できれば、ひいてはそれが、社会を変えていくことにつながることを願っています」とは、後に小林さんから聞いた ことばです。
「とくべえ」の美味しいコロッケ(撮影 キム キボムくん)。
映画は、作品としてだけではなく、「町の記憶」「町のありかた」ととても密接に繋がっている。映画館は大通りに面したところにはなく、歓楽街や ゲームセンター、多様な娯楽の結節点に存在する。また、人びとの暮らしの風景に欠かせない一点描となっている。様々な発見があった秋のフィールドワークで した。