外務省対日理解促進交流プログラム カケハシ・プロジェクト&信大生特別レポート

外務省対日理解促進交流プログラム カケハシ・プロジェクト&信大生

外務省対日理解促進交流プログラム カケハシ・プロジェクト&信大生

kakehashi2017_01.png

 平成29年2月8日、信州大学の学生23名がアメリカ・シアトルへ向かいました。外務省が進める対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」の派遣団としての渡航でした。

 彼らの使命は、派遣国の人々に日本の魅力を最大限アピールすること。そして、プログラム中に学んだ知識や経験から自分たちなりのアクションプランをまとめ、帰国後も実践し、伝え広げていくこと。

 学生達はこのプログラムの中で何を見て、何を感じ、そして何を学んだのでしょう―。帰国後の平成29年4月8日にその報告会が開催され、学生達の思いと気づきが述べられました。現地での様子や報告会での発表も交えながら、学生達が挑んだ「カケハシ・プロジェクト」について、ご紹介します。

(文・柳澤 愛由)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第105号(2017.5.31発行)より

「日本」を伝える「カケハシ・プロジェクト」。その目的と意義

22-2.png

現地でのプレゼンやその準備の様子。
直前まで改善を重ねた。

 「対日理解促進交流プログラム」は、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどの国々へ将来を担う人材を派遣もしくは招へいし、日本への理解を深めてもらおうという、外務省が実施する国際交流事業のひとつです。そのうち、「カケハシ・プロジェクト」は北米地域を対象としたプログラムです。


 カケハシ・プロジェクトは、海外に身を置くことにより、日本との違いや日本の海外における立場や強みを理解することで、学生達の様々な「気づき」につなげることも目的のひとつです。そのため、事前準備から現地での活動、そして現地での学びを帰国後にどう活かすか、という「アクションプラン」を参加学生自ら主体的に計画、実施することが求められました。

 信州大学は学生時代の海外経験や国際交流経験を重視しており、平成28年度カケハシ・プロジェクトに応募、全国23大学のひとつとして採択されました。そして平成29年2月8日~15日の7泊8日の日程で、応募者82名から選抜された23名の学生と2名の引率教員・職員がアメリカ・シアトルの小学校や高校、大学を訪問。チームごと工夫を凝らしたプレゼンやパフォーマンスに臨みました。それだけでなく、現地の日系人が創業した「宇和島屋日本スーパー」など、日本とアメリカとのつながり、また日系アメリカ人たちの歴史について触れる機会も設けられました。

渡航当日までプレゼン修正… 波乱の日々!

 このプログラム、一見和気あいあいの楽しい研修旅行であるかに見えるのですが、実は波乱の日々だったそうです。

 渡航前の準備期間は、わずか数ヶ月。それまでに各キャンパスにまたがるメンバーでプレゼン内容を決め、英語でのスピーチを完璧にしなければなりません。

23名のメンバーは、

①長野県のことを紹介する「NAGANOグループ」

②日本の伝統文化などを紹介する「NIPPONグループ」

③日本の「カイゼン」活動について紹介する「KAIZENグループ」

④パフォーマンスを主体にした「ORGANICグループ」

の4グループに分かれ、限られた時間の中、日本の魅力を発信すべくテーマを練り上げていったといいます。

22-3.png

その作業は現地でも夜半にまでおよび終了後は皆、疲労困憊だったとか

 例えば、KAIZENグループは、針が不要の書類止め具(針なしステープラー)や、人工衛星のパネルにも利用されている日本独自の折り紙文化を活かし開発された「ミウラ折り」等を例に、「カイゼン」という行為が日本のものづくりや企業文化につながっていることをテーマにしました。

 こうして学生達の努力は続きましたが、努力だけでは認められないのがこのプロジェクト。アメリカでの生活が長い引率教員の藤田あき実学術研究院(工学系)講師は、課されたミッションに対して徹底的に成果を追求することをメンバーに求めました。渡航直前であっても、厳しい指摘が相次ぎ、学生達は四苦八苦。寝る間も惜しんで日本式「カイゼン」さながらにプレゼン内容の見直しを続けたそうです。

 全体のチームリーダーを務めた工学部4年(派遣時3年)の田中規詞さんは、「ぎりぎりの努力を続ける中で、チームをいかに1つにまとめていくか悩みました。メンバーの安心した顔をみた時が、人生で一番ほっとした瞬間でした」と振り返ります。

 現地でも受け手の反応を見ながら内容の修正を続け、結果、現地の学校の先生から「これまで来た日本学生の中で最もよいプレゼンだった」という評価も頂けたそうです。

 「日本を発信し続けることのできるグローバル人材をいかに育成していくのか、それがこのプログラムの目的だと思いました。だからこそ荒療治を仕掛けました。必死に学び、考えた学生達はぐんぐん成長していったと思います。ここで身に付けた『発信力』、すばらしいと思います」と、藤田講師はこれまでを振り返り、学生達を称えました。

帰国後の様々な学びと気づき

22-4.png

帰国後の報告会では現地でのプレゼンの再現や学生達の今後の目標が語られた。皆はつらつとした笑顔

 報告会では、学生がキャンパスごとのグループ単位で帰国後の「アクションプラン」を発表。

 例えば、「発信力を高めること」を最大の目標にしていた工学部3年(派遣時2年)の大沼真実さんは、現在毎週図書館でEnglish Caféの実行委員を務めています。英語での発信力を鍛えつつ、留学生との交流の場も広げているそうです。

 また人文学部4年の六井知樹さんは、「多様性を正しく理解するため日系アメリカ人の歴史や、松本市での外国由来の人達について調査を始めました。その結果をポスターやfacebook、イベント等で発信していきたい」と述べ、多文化共生社会実現へ向けた活動に意欲を見せていました。

 信州大学田中清副学長(国際交流担当)・グローバル教育推進センター長は、「今後社会に出ていけば、否応なく多様な価値観の中に身を置いていくことになると思います。肌で感じた経験に勝るものはありません。今回の気づきを忘れずに、今後の人生に活かしていってほしいと思います。これからの皆さんに期待しています」と学生達にエールを送り、報告会を締めくくりました。

 アメリカという異国での挑戦だったからこそ、改めて日本と向き合い、学び、考えた学生達。日本と世界との関係、そして自らの可能性について様々な気づきを得たことでしょう。報告会を終えた学生達は皆、自信に満ちたはつらつとした笑顔を見せていました。

 「カケハシ・プロジェクト」はこれからが本番! 日本と世界、そして多様な人々との架け橋となって、羽ばたいていって欲しいと思います。

22-5.png

現地の学生達と交流後、記念撮影

ページトップに戻る

MENU