“ナノテクノロジー”の主役の一つに高分子微粒子が挙げられます。高分子微粒子は、塗料やインキといった工業製品として広く用いられてきました。近年では、化学/生体物質の分離や精製、バイオセンサーからフォトニック結晶の創製に至るまで、広範にわたる先端分野の鍵となる機能性マテリアルとして注目されております。先端材料として高分子微粒子を利用するためには、微粒子のデザインが非常に重要です。ターゲットとする応用によって、微粒子のデザインコンセプトは大きく異なります。これまでに、半球のみが無機物質で覆われたヤヌス型微粒子や、温度に応じて大きさが変化するハイドロゲル微粒子内部に無機ナノ粒子を場所・量・質をコントロールして複合化したナノコンポジットゲル微粒子などを創製してきました(図a)。
また、高分子微粒子は個々の要素として機能を発揮するだけでなく、集積化され、空間的秩序を形成することによって個々では成し得ない新たな機能を創出します。代表例として、微粒子が規則正しく配列し、優美な色彩を放つ人工オパール(コロイド結晶)が挙げられます(図b)。
今後、未だ達成されていない微粒子材料の新機能を創出するためには、微粒子集積化プロセスに内在する問題点を解決する必要があると考えます。その問題点の解決および次世代機能性材料の創製を目指すためには、あたかもプログラムされたように微粒子が自ら駆動する“4次元時空間”機能が有効であると考えております。ここでの時空間機能とは、空間的秩序が時間軸に沿って変化する、動的な秩序構造を指します。これまでの研究で、微粒子自らが周期的に大きさを変化させること、そして、周期的に集合/分散する新しい現象を発現させることに成功しました。現在は、この時空間機能を効果的に活用するための微粒子デザイン、実際の合成手法の開発、ならびに新しい微粒子集積化プロセスの開発に関する研究を展開しています。

図: 機能性高分子微粒子の電子顕微鏡写真(a)と微粒子集積体からなる人工オパール(b)