テキスタイル基礎実習(工場研修@YKK)

活動報告

YKK_Kurobe1.JPG4月13日、新入生10名と2年次生1名、合計11名の学生が、富山県黒部市にあるYKK株式会社およびYKK AP株式会社を訪問しました。YKKグループのファスニング事業・AP事業、両事業を支える工機技術本部について学ぶとともに、黒部萩生製造所で、浴室折戸ラインと価値検証センターを視察しました。また、最後の座談会では、繊維学部と工学部卒業生である先輩社員お2人からお話を伺う機会も設けていただきました。

学生参加報告書 藤原聖也(1年)
1:参加の目的
本リーディングプログラムは、主に産業界のリーダーとして活躍できる博士人材の育成を目標としており、そのためにはものづくりがどのように行われているかを学ぶことが重要となる。そこで本研修では、工場視察及びYKKの技術者の方との対談を通じて、大学で獲得した知識の現場への応用力を養うことを目的する。

2:参加した結果得られた課題
自分がこうした工場視察に参加したのは中学生以来のことであり、マーケティングや品質管理に関する知識を大学で学んだ上で実際の製造現場を視察するのは今回が初めてのことであった。大学の講義で学んだこととして、ライン生産(オートメーション化された製造ライン)、品質管理の方法(統計的な製品検査の抽出方法や、製品の管理方法など)などについて多少の知識はあったが、こうして実際の工場を見ると、自分が知っていたことはあくまで理論的・方法論的な部分であり、どう活用されているのかということについては全く知らなかったということを痛感した。今後この「テキスタイル基礎実習」においてはまた別の会社を見学する機会もあるため、今回痛感した実際のものづくりの現場に対する知識不足を、こうした体験を通じて解消していきたいと感じた。

3:参加した結果得られた成果
私は今回の研修を通じて、YKKグループのものづくりに対する「こだわり」と「責任感」について学ぶことができたように感じる。特にそうしたことを感じられたのは、YKKの「一貫生産思想」という考え方と、見学させていただいたYKK APの「価値検証センター」においてだった。
YKKではファスニング事業及びAP事業の製造ラインで使用されている機械をほとんど全て自社で製造している。こうした一貫生産をしている企業は日本ではごくわずかであると聞いた。また、自社製造した機械を海外工場へ輸出することで、海外でも日本と同等の製品を製造することができるそうだ。特に機械に関して自社製にこだわる必要はないのではないか、と研修前には考えていたが、技術者の方のお話では実際の製造現場の方と話ながら機械等をセッティングすることができるため、製造側・設計側それぞれに利点があるという。浴室のドアをオートメーションで製造している黒部荻生製造所を見学すると、その言葉の証明かのように作業工程はとてもスムーズで、そして無駄がないように感じた。
「価値検証センター」では、主にYKK AP製品の耐久性(耐風、耐熱、耐水性、数万回にも及ぶ開閉テストなど)が検査され、JIS基準以上の社内基準、及び消費者側の視点に立った消費者基準を満たすべく製品のチェックが行われていた。一般的な体育館よりも遥かに広い敷地にあらゆる試験用の装置が設置され、私はその敷地の広さと基準の厳しさに驚いた。
こうした製品製造に対する「こだわり」、「責任感」こそが、YKKをファスナーのトップメーカー、また日本トップクラスの建材メーカーにしているのだと感じた。単純な技術力の高さ、世界に先行してファスナー製造方法を確立したことだけが、YKKを今でも日本トップのメーカーにしているわけではないということがわかった。リーディングプログラムに所属する私にとっては、製造業に携わる会社がどういう姿であるべきか、ということを学ぶことができた貴重な機会であったと感じた。

4:成果を今後の研究にどのように活用するか
上述した今回の研究で学んだ「こだわり」と「責任感」は、自分の研究においても当てはまることであると感じた。自分の研究が基礎となって次の研究に繋がること、そしてその明らかにした成果がやがて製品や技術となって世の中にでていくということは、研究者として心に留めおくべきことだろう。もちろん普段から真摯に研究を進めているつもりではあるが、困難に直面したとき「こだわり」や「責任感」というものはわずかながらでも揺らいでしまうものだと思う。特に自分が専攻する感性工学という分野には、性質上、必ず"人"が存在する。人が使うものである以上、もちろん自分の研究には責任が伴う上、ただ研究を進めるのではなく「こだわり」をもって行わなければ、本当に人に対して良い成果が得られないと今回の研究を通じて感じることができたと思う。また、技術がやがてどのように製品製造へと繋がるのか、というビジョンを今回得たことは、今後の研究に活きていくと考える。

YKK_Kurobe2.JPG

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