ものづくり・ことづくり演習Ⅱ@チュラロンコン大学、タイ

活動報告

 本プログラム2年生である8名は、8月1日から8月8日までの日程で、リーディングプログラム必修科目「ものづくり・ことづくり演習Ⅱ」の合同合宿を行うために、タイのチュラロンコン大学を訪問しました。チュラロンコン大学の学生とワークショップを行い、研究発表、大学紹介、また文化についてのプレゼンテーションを行いました。また、チュラロンコン大学の教員および学生の案内で、タイの文化研修を行い、Grand Palace、Nitasrattanakosin Exhibition、Summer Palace、Bang Sai Royal Folk Arts and Crafts Centreを訪問し、意見交換を行いました。プレゼンテーションで2年生は、研究発表に対しても積極的に質問をするなど、活発な発言がありました。

 今回は、2年生にとって、昨年のリーズに続いて2回目となる海外での合宿であったが、学生がワークショップの間はチュラロンコ大学内のインターナショナルハウスに滞在することができたことも、また信大およびチュラロンコン大学の学生同士の交流が自由時間にもできたことで、深い結びつきができたことが最も大きなメリットでした。学生自身、リーズで、英語力の不足などで積極的に話すことができなかった経験から、大きく成長し、コミュニケーションを積極的に取る姿勢を垣間見ることができ、チュラロンコン大学の教員や学生のホスピタリティのおかげで、深い絆を築くことができました。仏教信仰に基づく思いやりやきめ細やかさなど、学生たちも多くのことを学ぶことができました。

 東海染工タイでの見学では、各工程だけでなく、生き残りをかけた品質へのこだわり、海外で生産するメリットなどについて、学ぶことができました。学生全員から疑問点についても活発な質問があり、丁寧に回答してくださった工場関係者の皆様に御礼申し上げます。グローバルに活躍なさるタイ東海染工の方々との意見交換から、学生は大いなる刺激を受けました。日本の良さである品質を売りにし、他社との格差を図るタイ東海染工の企業力を現場で学べたことは、今後の学生たちにとって財産となることでしょう。
----------------------------編集後記
 日本での猛暑の中出発し、タイへ到着してみると、日本より涼しく過ごしやすい日が何日もありました。バンコクでの交通量の多さにびっくりしながらも、タイに来たんだ!という喜びで渋滞も楽しめるほどでした。
 移動のバスの中で、チュラロンコン大学の学生らと話をすると、みんな優しい学生ばかりで、国の違いが問題にならないくらい、楽しい時間を過ごせました。
 タイを訪問し、人々の温かさに癒され、チュラロンコン大学の皆様のお心遣いに感謝しております。学生が自分たちで連絡を取り合い、一緒に夕食を共にしたり、研究室を訪問させてもらったという話も聞きました。学生生活から私生活のことまで、色々と話せて心から楽しかったということが、学生たちの表情からよく分かりました。感謝という言葉しか思い浮かばないほど、学生たちが親切にしてくれました。今後もこの友好が続いていくことを切望します。
  
 
 
 


学生の報告書より--------------------------------------------------
参加報告:プログラム2年生 設楽 稔那子

非常に有意義で得られたものがたくさんあった研修となった。
 参加の目的は目覚しい発展を遂げ、日本との親交も深いタイにおいて、現地の学生との交流を通して文化の違いや研究内容に触れたり、日本を支える東南アジアの工場に赴くことで、実際の大量生産のものづくりを見学させていただいたりすることである。以下に、今回の研修にて得られた課題と成果を項目ごとにまとめる。
○ワークショップ
 チュラロンコン大学、信州大学の両大学について、そしてどんな研究が行われているかの情報交換のために行われた。大学について、チュラロンコン大学はタイでトップレベルの研究や教育が行われている大学であり、その規模に驚いた。100年の歴史があり、年を重ねるごとに新しく建物が増え、年々規模が大きくなっているのが紹介やキャンパスツアーで感じ取ることができた。研究では、高分子やセラミックスについての研究発表が主であった。いずれも生活に直結するテーマであった。研究のための研究というよりも、生活のための研究という印象が強かった。日本では、研究もしくは開発したが、使い道がわからない材料や技術が多いという。タイでは常に先を見据えた研究がなされていることに日本は見習っていく必要があるように感じた。質問ができなかったのが非常に残念で、もっと他分野の知識を身に付ける必要がある。
○Cultural tour
 欧米とも日本とも大きく違う文化を肌で感じることができた。まず、手先の器用さ・細工の細かさに驚いた。王宮や寺院では非常に豪華絢爛な建物や像がたくさん見られた。しかし、近づいて見てみると非常に細かい色鮮やかなタイルが敷き詰められていたり、細かな着色がされていたりとタイの方のものづくりに対するこだわりを感じた。タイの寺院で非常に興味深いのが、さまざまな文化を取り入れる姿勢がある点だ。王宮では3つの棟があった時に、タイの伝統的なスタイルだけでなく、カンボジアスタイルを取り入れてみたり、王朝を再現した公園ではヨーロッパのスタイルを取りいれたりしていた。忠実に再現できるのも、タイの方の器用さ、また観察力が優れているからだと思う。
 また、信仰の強さは日本と大きく違う。寺院等に入る際は肌の露出を控えたり、正装を求められたりするのは日本では見られない点である。
同じアジアで英語にすれば同じtempleなのに、大きな違いがあるのは非常に興味深いと感じた。
Claft centerでは障害を持たれている方などが、伝統芸能を受け継ぐためものづくりをしていた。作業が非常に細かかった。こういった施設はすべての人が平等に仕事をする機会を与えると同時に文化継承という点でも非常に重要であり、日本にも同様の施設をもっと作るべきと感じた。
○タイ東海染工
 日本のものづくりを影で支えている東南アジアの工場を直に見ることができた。主に日本向けの商品を取り扱っているが、従業員のほとんどがタイの方であり、先にも述べた手先の器用さ故、たとえ古くて壊れてしまった機械でもしっかり直して使えるようにしている点は本当にすごいと思う。日本のやり方を踏襲するべく、装置も日本にあるものと揃え、水も軟水化してから使っている。その土地の環境基準をクリアできるような設定も不可欠である。タイで工場を展開するメリットは人件費よりも年間を通して温暖な気候であり、品質への影響が少ないことによると聞き、日本では大量消費ではなく品質重視のものづくりが求められていることを改めて感じた。年間20℃以上で30℃前後の温度であれば、水温やヒーター等の温度を大きく変える必要もなく、品質は一定になり、コストや作業効率にも大きく影響すると感じた。さまざまな理由から、日本の企業はタイをはじめとした東南アジアの国に進出している。その現場を直に見られたことは非常に有意義であった。
○市場調査
 サンペン市場は繊維系の問屋街で、非常にたくさんの客や商人で賑わっていた。以前は全てが繊維問屋であったそうだが、現在では雑貨類の取り扱いが目立つようになっている。そんな中でも繊維を取り扱っている問屋では反物が所狭しと並んでいて、オーナーと買い付けの人たちが話をしながら商品の買い付けを行っていた。日本は派手な色や柄ものが多い印象があるが、タイの問屋はあまり派手な色合いではなかった印象を受けた。全てを回ることはできなかったが、活気にあふれ、賑やかな市場であった。

 今回の研修でタイと日本は非常に親交が深いと感じた。あらゆる製品が日本のメーカーで、地下鉄や高架橋には日本との技術交流に関する記述が貼られていた。この親交関係を崩さず、今後さらにタイと関わっていくにはどのようにすべきかは大きな課題である。工場タイ進出のメリットは品質が一定に保てることであるというように、タイに進出するメリット、必要性をもっと見出して行く必要がある。細かい作業や模倣の精度の高さなど、日本人が知らないタイの強みはたくさんある。ただ、大量生産のために工場や会社を進出するのではなく、今回直接見ることができたタイの良い点を活かせることができたら、ものづくりを通してさらに良い関係性を築いていけると思う。 
 また、タイは日本の現代社会における文化の多くを継承している。そのため、タイの今以上の発展には日本の力も必要になると思う。生産過程を日本のまま引き継いでいるのであれば、わかりやすく、操作しやすいシステムを互いに協力して作り出したり、交通渋滞をなくすために、日本の交通ルールを導入したり、さまざまな方法で一層貢献していきたい。
反対に日本も多くのことをタイから学ばなければいけない。とくに、ホスピタリティの心である。どこへ行っても多くの方がにこやかに挨拶をしてくれた。タイをはじめとした新興国に対して、あまり経済、産業、風土、文化などイメージがはっきりできていなかった。研修を通して技術的な発展だけでなく、人の優しさに触れられたことが非常に印象的である。特に、学生や先生方に助けられた点がたくさんあった。去年のイギリスでの研修では、互いに交流するのが難しかった。自分が消極的だったことが大きな原因である。今回の研修では、去年の反省を活かしたいと思い臨めたので、積極的に話しかけるように努力した。まだまだ英語はうまく話せず、身振り手振りで伝えていたが、なんとかコミュニケーションが取れ、前回の反省を活かすことができたと思う。タイの学生や先生方の大らかでとても友好的な人間性もあって、非常に有意義な時間が過ごせた。ワークショップで質問ができなかったことが今回の研修で最も反省し、悔しく感じている点であるが、建物や生活様式だけでなく、人やそれらを支える技術・研究を間近に見ることができたのは自分にとって非常に良い経験であり、研究姿勢やおもてなしの姿勢は自分も実践していきたい。

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