CITI Japan プロジェクトの活動は、2017年3月をもって終了いたしました。
CITI Japan e-leaning教材は、2017年4月より、一般財団法人公正研究推進協会 (APRIN)が運営いたします。詳細はAPRINのウェブサイトをご覧ください。
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活動報告活動報告

『文部科学省「大学間連携共同教育推進事業」~研究者育成の為の行動規範教育の標準化と教育システムの全国展開~』「CITI Japanプロジェクト」キックオフイベント密着レポート

2012.12.28 【イベント

平成24年11月15日、東京・上智大学四谷キャンパスで「CITI Japanプロジェクト」の発足記念式典と発足記念講演会が開催され、文部科学省による大学間連携共同教育推進事業「研究者育成のための行動規範教育の標準化と教育システムの全国展開」のキックオフを迎え、事業が本格的にスタートとなった。

【13:00~CITIプログラム体験】

まずは、イベントに先駆け、設置された体験コーナーでCITIプログラムを体験。ユーザー名とパスワードを入力すると、ユーザーに必要な講習教材を画面に表示。ユーザーは10~20ページで構成された教材を30分ほどで学習後、○×クイズ形式のショートテストを実施し、終了後、正解率が表示されるという仕組みを確認する。テストが合格成積であれば画面上に「修了」と表示されると同時に、管理者にも通知される。そしてユーザー個人に対して、何の項目が修了しているかを一覧として提示する一方、管理者には誰がどの必須受講科目を修了しているかの情報を一覧表で提示する。これにより、教職員による学生の学習進捗状況の把握が一覧でできるようになるとともに、倫理審査委員会(IRB)が臨床研究の審査申請書を審査する際に、「申請書を提出した研究者等が必須受講科目を修了したか否か」を事前確認することが可能になる。


体験コーナーでは、キックオフイベントの参加者が担当者からの説明を聞きながらCITI Japanプロジェクトのプログラムを体験


体験者はプログラムのユーザーがオンライン上で受講コースや終了コースを把握できるシステムを理解した

【14:00~発足記念式典】

続く記念式典では、代表校として信州大学の山沢清人学長があいさつ。「現代は社会が急激に変化するなかで、難しい課題を解決に導く多様な人材が強く求められている。今回連携した各大学の強みを生かして、自然科学、人文科学、社会科学など学問の枠を越えて融合し協動して、グローバルな場で活躍できる人材にふさわしい行動規範を身につけた研究者を育成していきたい」と語った。

続いて、事業を統括する信州大学の福嶋義光医学部長がプロジェクトの概要を紹介し、
「今回の事業の第一の目的が、研究者のミスコンダクトを減らすということではない。倫理とは理想を追い求めるものであり、本事業では最初に、研究者が必ず身につけておかなければならない国際標準の行動規範とは何かについての教育コンテンツを全国の研究者および生命倫理や法律の専門家の合意のもとに作成する。
次にこれを eラーニングシステムに載せ、全国の大学・大学院における倫理教育・行動規範教育の一環として使っていただく。 文科省からの支援を得ることのできる5年間で基礎作りをし、わが国の行動規範教育のスタンダードとして継続できるものとしたい。本事業を行った結果として必ず研究者のミスコンダクトは減少すると信じている」
と熱意を伝えた。

また来賓からは、文部科学省高等教育局大学振興課長の池田貴城氏がお祝いの言葉を述べ、
「国公私という設置形態を越えて、各大学の強みを生かした取り組みにとても期待している。今回の事業は49件を採択したが、150を越える応募があった。この成果は、参加校はもとより、広く世の中に情報発信していただきたい」
とあいさつ。

厚生労働省大臣官房厚生科学課長の福島靖正氏も
「厚生科学研究費を所管する立場として、研究費等の不正使用に関し、CITIは大きく貢献してくれると心から期待している」
と述べた。

さらに、独立行政法人日本学術振興会理事で、本プロジェクトの外部評価委員を務めている浅島誠氏が
「今回のキックオフミーティングには、大学のもっとも基本的な使命である研究者の育成と行動規範の規定というキーワードが含まれている。連携6大学を中心に、全国展開を見せることを切に願っている」
とあいさつ。

続いて独立行政法人科学技術振興機構(JST)総括担当理事の川上伸昭氏は、
「JSTにおいても、残念ながらなくならないミスコンダクトの対策として、啓発を呼びかけ、教育に力を入れることが必要だとの考えがまとまった矢先に、信州大学からCITI Japan プロジェクトの話を受けた。JSTも何らかの形で連携を組み一緒にできると考えている」
とあいさつをした。

その後、連携6大学と4機関で協定書の交換が行われ、最後に東京医科歯科大学湯浅保仁医学部長による閉会の言葉で記念式典は閉幕となった。

山沢学長挨拶
発足記念式典で、代表校としてあいさつした信州大学の山沢清人学長

福嶋医学系研究科長挨拶
事業を統括する信州大学の福嶋義光医学部長がプロジェクトの概要を紹介
参加者には海外からの賓客も多く見られ、英語、日本語の同時通訳も行われた。資料も英語と日本語が併記され、まさに国際セレモニーといった様相


連携6大学と4機関の各代表者に協定書が手渡され、記念撮影が行われた


閉会の言葉を述べた東京医科歯科大学医歯学総合研究科の湯浅保仁副研究科長

池田貴城氏  福島靖正氏のサムネール画像  川上伸昭氏 浅島誠氏 
(左より)来賓としてあいさつした文部科学省高等教育局大学振興課長の池田貴城氏、厚生労働省大臣官房厚生科学課長の福島靖正氏、独立行政法人科学技術振興機構(JST)総括担当理事の川上伸昭氏、独立行政法人日本学術振興会理事でCITI Japanプロジェクト外部評価委員を務める浅島誠氏

 

協定書交換
(左より)東京医科歯科大学医歯学総合研究科・湯浅保仁副研究科長、信州大学・山沢清人学長、福島県立医科大学・阿部正文副学長、北里大学・岡安勲学長、上智大学・滝澤正学長、沖縄科学技術大学院大学・ロバート・バックマン副理事長、全国医学部長病院長会議・長田正昭事務局長、日本医学会・門田守人副会長、独立行政法人宇宙航空研究開発機構/有人宇宙環境利用ミッション本部参与/前国際宇宙ステーションプログラムマネージャー・横山哲朗氏、全国遺伝子医療部門連絡会議・福嶋義光理事長

 

【15:00~発足記念講演】

続いて行われた発足記念講演会では、本プロジェクトの副事業統括である信州大学医学部の市川家國特任教授が今回の事業とその仕組み(使用方法)を説明。

  • ・世界は取り締まりから教育の時代へと移っており、eラーニングがその中心となってきている。
  • ・今回のプロジェクトは6大学が集まり、多様な専門家と共に教材を作って各大学に配布することがテーマだが、実際に使っていただくためにさまざまな形で広報活動を行う。
  • ・米国版CITIが世界標準化しているため、これを参考とする。
  • ・連携6大学が得意分野を専門に担当した上で全国の有識者からさまざまな知恵を拝借し、さらに運営委員会や外部評価委員会を開くことで、研究者が学習すべき項目を設定する。
  • ・教材は定例会で作成する。全部で55単元作成し、各研究領域によって必要項目を追加する。
  • ・沖縄科学技術大学院大学が英訳をすることで、日本のルールを含めた行動規範教育の英語版を提供する。
  • ・米国の研究費申請においては、CITIの教育を受けていない時点で審査が終了する。日本でもCITI教材が全国的に受け入れられるためには、科研費の申請フォーマットに「どのような研究規範教育を受けたか」という質問事項を設けてもいい。
  • ・プロジェクトの継続性を考えた場合、補助金で基盤を作るが、補助金の支給が終了した際は、十分に増えた利用者の定額負担によりアカデミックな形で持続させる。
    といった今後の事業展開を、わかりやすいスクリーン表示と共に説明した。


CITI Japanプロジェクトの事業と使用方法を説明した、本プロジェクト副事業統括を務める信州大学医学部の市川家國特任教授。


スクリーンの資料には英語と日本語が併記された

続いて、3名の博士による特別講演を行った。まず、米国においてCITIプログラムをホストするマイアミ大学で、同プログラムのコンサルタントを務め、RCR(Responsible Conduct of Research:責任ある研究行為)教育プログラムを指導する医学部講師のリード・クッシュマン氏が、米国における行動規範教育の全体像を、スライドを用いて同時通訳付きで説明。
  • ・米国では、1989年からNIH(アメリカ国立衛生研究所)が、2009年からNSF(アメリカ国立科学財団)がそれぞれ研究倫理の研修のための規程を設けることで、RCR教育が全ての研究者に不可欠な標準的科目となっている。米国におけるファンディングは、RCR教育を満たしているかで決定する。
  • ・RCR教育の標準トピックは全部で9項目。ORI-9と呼ばれており、全てのRCRクラスで教えられなければならない。
  • ・RCR教育における基準は、指導の期間や頻度、方法、対象者など、NIHとNSFがそれぞれ違ったアプローチで設けている。
  • ・効果的な倫理教育に対する動機付けは、米国の機関では、(1)何か事件が起こった場合と、(2)似たような機関が倫理教育標準を設けている場合、(3)国が規制で義務化した場合の3つのカテゴリーが考えられる。ただし事件を起因とした場合は、すぐに反応が起こるがなかなか定着しないのに対し、政府の義務化は合意まで時間がかかるが、一度決定すると長期に定着する。どの方法がより良いかは国によって異なるが、定着させることが重要である。
  • ・効果的な教育を考えた場合、米国の心理学者・ベンジャミン・ブルームが提唱した「ブルーム・タキソノミー(分類学)」が考えられ、RCRもこれに従うことができる。結果的に私たちは「ミスコンダクトやデータの改ざん、ねつ造を減らしたい」という目標の下、倫理教育に時間をかけるようになった。
  • ・基準の設定は、組織が画一的な基準に向かうため、天井を低くすることにもなりかねないが、機関を底上げするものであるべきである。
  • ・研究倫理で何が罰せられ、何が許されるかは組織内の文化や風土に左右される。また指導者は、科学者の適切な行動を示さなければならないし、研修生との関係性も重要になってくる。
  • と講演した。
次に、米国被験者保護局の副局長で微生物学・免疫学博士、薬剤師のメロディ・リン氏が、行動規範教育の一部である「人を対象とした研究」の観点から、国際共同治験(※)とHRP(被験者保護)の教育についての世界的な動きを、アジアを中心に語った。
  • ・国際共同治験の登録者数はここ数年でアジアが大幅に増加しているのに対し、アメリカその他の地域は減少傾向が見られ、アジア太平洋地域へのシフトが見られる。
  • ・製薬業界は、アジアの中でも特に日本が所属する北東アジアに焦点を当てている。人口が多いため患者数が多く市場が大きい、人件費が安く効率が良い、卓越した技術を持つ臨床医及び科学者が揃っているといった理由が考えられる。
  • ・アジア各国における国際共同治験の参加は、国によって申請プロセスが異なるため、IRB(治験審査委員会)と臨床試験の承認に時間がかかり、規制上の課題が残る。オリジナルの同意文書またはプロトコルの翻訳方法も大きな課題となる。例えば日本では30~45日間で承認されるが、中国は155日~1年かかる。
  • ・2008年の時点で、日本は臨床試験数が少なくアジアの中で孤立している存在だったが、2011年には急増し、アジア全体でも日本・中国・インドが7割を占めている。また日本は業界指導の第Ⅲ相(多数の患者に対して薬剤を投与し、第Ⅱ相試験よりも詳細な情報を集めて実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する)の治験数がアジアの中でもっとも多く、研究開発のリーダーとなり得る。そのためには教育研修が必要であり、今回のCITI Japan プロジェクトキックオフイベントのような場がふさわしい。
  • ・治験の被験者は基本的にボランティアであり、彼らの安全性を保護しなければ治験の参加者が獲得できず、有効なデータが得られないため、被験者保護教育は必要性が高い。米国では1998年にペンシルバニア大学で遺伝子治療の大失敗があり、被験者保護の教育研修は連邦および機関の規制要件になっている。
  • ・教育は対面方式のほうが有効であると言われるが、医師や研究者は忙しく必ずしも実施できないため、オンラインのコースが有用である。
  • ・米国における被験者保護教育は、責任医師から学生まで研究チーム全員が最新と認定されたものを受講し、最新の記録を保持する責任がある。
  • ・米国の公的研究費を資金源とする研究に参加する場合、各国内で研究を行う場合でも、研究者は米国(CITI)と同等の倫理教育を受けている必要があり、その一例がFWA(税国連邦保証制度)である。この取得のためには、研究者だけでなく、施設長や倫理審査委員会も被験者保護教育を履修しなければならない。
  • ・アジアにおいては、各国でCITIあるいはGCP(臨床試験における被験者の人権と安全性の確保、臨床試験のデータの信頼性の確保を目的として定められた法律:CITIモジュールを使用)を導入しているのに対して、日本は楽観視している印象を受ける。今回のCITI Japanのメンバーは、全国的に行動規範教育を標準化して実施することにコミットしている。
    との講演を行い、日本の現状における倫理教育に警鐘を鳴らした。
    (※)新規の医薬品の世界規模での開発及び承認を目指して企画される治験。ひとつの治験に複数の国や地域の医療機関が参加し、共通の治験実施計画書に基づき、同時並行的に進行することで、世界規模の新薬の上市時期を早め、売り上げを最大化する。
最後に、CITIプログラム共同設立者兼CEO、マイアミ大学医学部放射線腫瘍学教授のポール・ブラウンシュワイガー氏が、CITIのプログラムの発展の経緯や現状、およびグローバル化について講演した。
  • ・CITIは、研究の不正および(先ほどリン先生が話した通り)ペンシルバニア大学の残念な事件に対応するために、全米の10の教育機関から発足し、1年ほどでまとめられた。
  • ・研究でのインテグリティを推進するためには組織的なコミットメントが必要で、さまざまな倫理委員会や動物保護委員会、スポンサードプログラムおよびリサーチアドミニストレーターにより推進、育成される。
  • ・研究におけるインテグリティがなければ、被験者および社会がリスクにさらされ、組織の活動停止につながり、機関および個人の面目をつぶし、資源も無駄になり、訴訟も起きる。実際に米国では研究の不正によって収監された人もいる。そして、より重要なのは、研究を支援している社会からの信頼も失うことである。
  • ・社会の信頼を保持するためには各機関の説明責任および倫理的行動の文書化が必要である。文書化は研究者が信頼ある研究を行うための手助けとなり、その教育は科学研究の信頼性の基盤となるプロフェッショナリズムを作る。
  • ・研究倫理教育は研究チーム全員が網羅する必要があり、早い段階からさまざまな方法で頻繁に行う必要がある。
  • ・CITIコース修了時の学生アンケートでは、「人を対象とする研究において、対象となる人(被験者)の保護に関する教育は、関係者全員が受けることは必須である」との設問に90%近くが賛成している。
  • ・CITIには、それぞれの研究領域の専門家によって作られたあらゆる研究倫理のコースがあり、大学、高等教育機関、メディカルセンター、政府のほか、ファイザーやIRBなど産業界でも利用されている。
  • ・CITIは定期契約に基づくプログラムで、世界各国で1800くらいの利用機関があり、日本では60ほどの機関で使用されている。
  • ・2012年9月の時点で、世界で5万5000人が新規にCITIの学習を修了しており、9月だけで見ても10万人以上が受講していた例がある。2000年9月以降では330万人以上に利用されている。
  • ・雑誌『USニューズ&ワールド・レポート』によると、米国のランキング50位までの全大学がCITIを使用しており、100位までを見ても99大学の利用が見られる。また、世界の医学部ランキング50位までのうち、30機関がCITIを使っているというデータもある。
  • ・CITIにはGCP、基礎コース、上級コースなどさまざまなコースがあり、バイオメディカル、社会行動、エンジニアのための責任ある行動など、分野別に分かれている。ここ1年間で修了コースは22%増え、同時に毎月の修了者数も同速度で伸びている。
  • ・CITIのユーザーは40~50%が学生であり、15%がPI(Principal Investigator:研究室主宰者)またはリサーチャーである。
  • ・CITIは世界各国で使われており、活動が集中しているのがアジアの日本、韓国、台湾、シンガポール、インドである。またラテンアメリカでも活発である。
  • ・CITIの国際化に伴い、このプログラムを世界各国の責任ある機関に提供しようというのが、「CITI International Center of Excellence」である。これはCITIを各国の言語または文化に即した形で開発し、国際的な研究者に配信するもので、現在立ち上がってるのが、インド、韓国、日本、カナダ、台湾、ウクライナである。
  • ・CITI利用満足度を任意かつ匿名で尋ねた場合、2/3の修了者が「今後役立つ」と回答している。また、被験者保護や倫理的研究とは何かを同僚や学生に自信を持って説明できるかと尋ねると7割が「はい」と回答している。また多くの人が「CITIはAuthorの条件を理解する上で役立った」と回答している。
  • 以上のことから、少なくともCITIはアメリカで定着しており、世界でも定着し始めているということが言える。
    との講演を行った。

リード・クッシュマン氏 メロディ・リン氏 ポール・ブラウンシュワイガー氏
(左より)スライドを用いて特別講演を行ったマイアミ大学医学部講師のリード・クッシュマン氏、米国被験者保護局副局長のメロディ・リン氏、CITIプログラム共同設立者兼CEOでマイアミ大学医学部教授のポール・ブラウンシュワイガー氏

 

【16:30~パネルディスカッション「研究者行動規範教育のグローバル化に向けて」】

16:30からは北里大学大学院医療系研究科高田史男教授の司会で、アジア各国の研究者を招き、各地域の倫理教育の取り組みを尋ねるパネルディスカッションを行った。
北京大学医学部医療倫理学ヤーリー・ツォン教授は、昨今の日中問題により、大学からの制約で来日が叶わなかったが、以下のようなコメントを寄せた。
「北京大学ヘルスサイエンスセンターは、RCRコースを3年前から開始しており、CITI、RCRはプリコースの要件になっている。教授陣は医療倫理、医療の歴史および遺伝子研究の科学者で、講義とケース・ディスカッションがもっとも一般的な教え方である。そこで、学生とメンターとの関係等に関する体験、観察が収集され、教職員が問題を特定し、より良い提案が可能となる。」 このコメントは、市川家國教授によって読み上げられた。

続いて、韓国を代表し、韓国カトリック大学生命倫理学准教授のB.I.チェ氏が、韓国における最新の政策転換とCITI Korea教育について語った。
  • ・韓国におけるCITIプログラムは、2000年にチェ氏がひとりで始め、ポスドクの方とふたりで200のモジュールを翻訳し、3年がかりでオンライン化した。
  • ・韓国政府は、この1年ほど非常にアグレッシブに生命倫理学の問題に取り組んできた。これは肝細胞クローニングの科学者である黄禹錫教授のおかげによるもので、来年の2月には全ての研究者を対象とする研究に対する新しい法律が施行される。この法律は、宇宙科学や工学に対しても、IRBのレビューを受ける全研究機関で義務化され、非常に厳しく適用される。
  • ・保健福祉省の調査によると、全ての研究がIRBによってレビューされなければならないため、新しい法律が施行されるあと3カ月の間に、新しいIRBがおそらく2600ほど作られなくてはならないという。それが可能かは不明だ。なぜなら、バイオメディカルにおいては、韓国は体制が整っているが、それ以外の研究分野においては、多くの学者はIRBという概念すら聞いたことがなく、また、倫理教育を教えようにも教材が何もないため、混乱状態にあると言えるからである。
  • ・バイオメディカルに特化すると、チェ氏がCITIの300モジュールを提供し、新たにグループ分けをすることで180のモジュールにして、それを基礎コース、上級コース、追加のリフレッシャーコースの3つに分類している。上級と追加コースは、それぞれ1と2に分かれ、一度修了すると証明書が出る。新しい法律によって、研究者は倫理の教育を受けた証明書が必要になるため、この修了書は重要になる。また、韓国のガイドラインによると、2年に1回、倫理教育を受講した証明が必要なため、上級者と追加コースを設けた。
  • ・CITIは現在、バイオメディカルにおける研究者およびIRBメンバー、つまり教授クラスの人々が受講でき、2011年3月から2012年6月までの統計によると、基礎コースを修了した人は毎月500人登録され、この1年ほどで8800人ほどの教授が履修していることがわかる。また参加機関数は36から94に増加している。
  • と報告した。
次に、インド・チェンナイのスリ・ラマチャンドラ大学コミュニティ医療学部教授のパンカジ・シャア氏が病院の社会的責任(HSR)を含むRCR教育の現状と、インドにおける倫理教育およびCITI Indiaのプログラムの導入について話した。
  • ・インドだけでなく世界では、倫理研修は非公式な教育で学ぶことが多いが、最近は変わってきており、ワークショップ等も開かれている。
  • ・先日、インド医学研究協議会(ICMR)は倫理委員会のメンバーや倫理の専門家を対象とした1年のプログラムをオンラインで開始した。またインドにおいては多くの個人の研究者が、CITI Indiaのプログラムを受講している。インドにおいては、これがもっとも組織立った形で倫理を学ぶ方法である。
  • ・2009年にマイアミ大学のCITIと覚書を調印した。この際、CITIモジュールにインド特有のコンテンツを追加すること、CITI Indiaのプログラムを国際的なファンディングに登録することの2つの動きが重視された。
  • ・CITI Indiaは2011年末から提供しており、多くの研究者の尽力により、国際的な基準に加え、インド特有のコンテンツの両方を学べる仕組みになっている。今後は、インド特有の生命倫理および動物倫理においてのコンテンツも策定予定である。
  • ・CITI Indiaは、公式に義務づけられてはいないものの、スリ・ラマチャンドラ大学の倫理委員会のメンバーと博士号保有者全員に履修が義務化されている。
  • ・インド各大学に対してCITI Indiaの採用を促すため、デリー、ハイデラバード、バンガロール、ジャイプールでさまざまな会議やワークショップに参加し、パンフレットを配布して、教育に関するさまざまなメディアに情報提供を行っている。
  • ・CITI Indiaには、インド全体で研究倫理に対する認知度が高くないという弱点がある。そこでICMRによる教育をもっと提供して内容を豊かにし、全研究者に提供していかなければならず、定期的なアップデートも必要となる。今後は新しいコンテンツをアップデートして継続しなければならない。CITIをさまざまな地域や大学で促進する必要がある。
  • との考えを示した。
そして、日本からは独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センターの有本建男センター長が、3.11以降の日本国内における科学・技術に対する不信とミスコンダクトが増加する現状について話した。
  • ・日本における科学と社会の問題としては、3.11以降、一般市民は科学技術者に対する不信感を募らせている。「想定外という言葉を使いすぎるが、本当に研究をしていたのか」「さまざまな科学者が勝手なことを述べているが、全体としてひとつの統一的な見解を示すべき」などの意見が見られる。
  • ・科学内の問題としては、iPS細胞の臨床研究で虚偽発表をした某氏および共著者の深刻な問題がある。論文における共著者名の削除はあり得ない。
  • ・科学と政治は十分なコミュニケーションが取れていない。科学と政治の間にはさまざまなケースがあるという構造を理解し、科学者およびファンディング側が対応する必要がある。
  • ・先進国は経済不況で税収が増えず、大恐慌の時代に突入した。そのなかで今までのようなありきたりな科学のシステムを続けていれば必ず政治の介入が起こる。
  • ・各国のアカデミーが結集し、科学的な政策提言を行う国際的機関「インターアカデミー・カウンシル」について、最近、レスポンシブルコンダクトの教科書が出た。そこには、ファンディングエイジェンシーのレスポンシブルは、研究者組織と組んだ上で教育に対してサポートし、開発することが大事だと書かれている。これはCITIと大変近いものを感じる。
  • との見解を語った。


(左より)パネルディスカッションにて講演を行った韓国カトリック大学生命倫理学准教授のB.I.チェ氏、インドのスリ・ラマチャンドラ大学コミュニティ医療学部教授のパンカジ・シャア氏、独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター長の有本建男氏

 

この後、上記3名にリード・クッシュマン氏が加わり、全4名によるパネルディスカッションが行われた。シャア氏に対しては「CITI Indiaにおけるインド特有のコンテンツとは具体的に何か」との質問が上がり、「個人の研究者が治験を行う場合は国際的なGCPに登録し、またインドの治験のレジストリーに登録しなければならないというルールがある。
また、インフォームドコンセントの録画も現在検討している」との回答を得た。また、「CITIを知らない人に対して、どうやってプロモートするか。またCITIの定着にはどういう手段がありえるか」という質問に対し、有本氏は「これまでのケースを列挙するのがもっとも手っ取り早いのではないか」と回答。 それに続き、客席上の浅島誠氏は「日本学術会議で、科学者の行動規範に関するシンポジウムを計画中である」と答えた。
またブラウンシュワイガー氏は「今までの経験上、プログラム開発のための助成金を得るのは比較的簡単だが、持続するための助成金の確保が困難で、日本は5年後に今より難しい状況になると考えられる。そこで、それまでの期間にサブコミッティーのようなものを作って、持続可能性についての対処を考えたほうが良い。米国では現在同じ問題に直面しており、各機関がCITI加盟のために支払う費用は天井に達している。そのため、例えばリサーチスタディーデザインのコースのように、新しい教材を提供しなければならない」と定着に関する問題点を示唆した。

パネルディスカッション2
パネルディスカッションの講演を行った3名に記念講演を行ったリード・クッシュマン氏を加え、質疑応答が行われた。会場の参加者からも活発な質問が出された

 

最後に、司会を務めた高田史男教授が「CITI Japanは実際には5年で認知度を上げ、事前に必要だと公知することで、将来的にはひとつのスタンダードとなるべきコンテンツである。そのためには、国内の各機関が連携をして地盤を作ることが大切となる。現在、米国の半歩後方を歩んでいることをラッキーだと考え、米国を参考にしていきたい」とまとめた。
パネルディスカッション終了後には情報交換会も行われ、互いに親睦を深めつつ、感想や意見を述べたり、質問をしたりと、会場は大いに盛り上がり、閉幕となった。


パネルディスカッション終了後も、参加者は積極的に各講演者に質問する様子が見られた

 


イベント後は会場を移し、情報交換会が行われた。滝澤上智大学長、岡安北里大学長のあいさつに続いて、髙久日本医学会長による乾杯のご発声で開会。文部科学省の科学技術・学術政策局の板倉基盤政策課長、研究振興局の菱山振興企画課長、JAXAの横山有人宇宙環境利用ミッション本部参与からもあいさつをいただき、飲食をしつつの和やかな雰囲気に包まれた

 

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