山岳科学研究所は、ネパールの国立トリブヴァン大学理工学部と部局間の学術協定を締結しています。平成25年1月の締結以降、本研究所所員がネパール・ヒマラヤにおける山岳氷河や永久凍土、地すべり災害といった研究を協定に基づき共同で実施してきました。

 このたび、トリブヴァン大学理工学部地質学科から本研究所所長へ、集中講義開講のため客員教授の派遣要請がありました。トリブヴァン大学トリチャンドラ校地質学科では、本年2月に大学院修士課程に地質工学コースを新設しましたが、その一期生である1年次学生の必修科目「応用地形学」を担当する講師がいないことから,学術協定にもとづいて派遣要請がなされたものです。本研究所では要請に応え、地形地質・防災研究部門の朝日克彦助教を派遣しました。朝日助教は6月21日から29日まで、計15時間の講義(1クレジット;日本の2単位)を実施しました。ネパールでの高等教育は基礎教育については一定の水準を維持しているものの、現場での実習・経験が乏しく、知識と経験が十分にリンクしていない弊害があります。そこで、空中写真の判読実習や活断層に関する1日巡検も併せて行い、途上国における教育効果を上げる工夫もなされました。ネパールでは高等教育は英語で行われており、講義は英語で行いましたが、実習や巡検、質疑応答はネパール語も交えて行いました。来年以降は、提供した教材をもとに先方の若手教員が引き継いで開講することになっています。

 ネパールは発展途上国ながら、「山岳科学」分野では名実ともにアジアのリーダー格であり、本研究所は学ぶべき点が多々あります。今回の派遣要請、客員教授としての受け入れは、学術協定の枠を越える、部局間の連携を実現したものであり、さらなる連携強化が望まれます。

トリブヴァン大学トリチャンドラ校

地質工学コースが入る校舎

巡検における,空中写真の実体視判読実習

トリチャンドラ校長らとの懇談 
(左から) マナンダール地質学科長,ネウパネ・トリチャンドラ校長,朝日助教  (後) バッタライ地質工学コース長