信州ブックレットシリーズ003
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27汕頭市(貴嶼村)の現状からみる中国の経済発展と循環型社会構築への課題お金持ちになった人たちです。汚い仕事を引き受ける「外地人」たちは,とても,他産業に転業するような技術を持たないし,お金もない。こういう関係で,事態は再生産されるわけです。 もっと大きくは,国および地方自治体の産業政策があります。産業の拡大・集積,工場の大規模化・高技術化によって,例えば,国家環境保護総局が,環境モデル都市だからというので,最新鋭「モデル工場」を,貴嶼村の真ん中につくる。立派な「電子市場」もつくる。そこに新しい科学技術を採り入れた機械を入れて,最先端のリサイクル処理を始めます。しかし,そこでは到底全部を処理しきれないし,コストがかかる。周りには,相変わらず古い家族経営の汚い工場が並んでいるのが現状です。 実際には,経済計画を立てても,インフォーマル・セクターと言いますか,政府や市の言うことを聞かない業者たちが,抵抗するかたちがあります。2009年になっても,環境汚染は依然として存続し,解体技術は原始的であり,産業が家庭規模の小作業場に分散し,産業計画が停滞していると,公式に報告されている状態です。 もしこれがフォーマル化されて,例えば大きなリサイクル工場のみにされたとしても,先ほど言った,国の「リサイクル団地」が別個にありますから,今度はそこでの全国的競争に巻き込まれ,例えば労賃を上げなければならない,しかし,それは貴嶼村では困難だ,というような問題が存在しています。 おわりに -NIMBYからNIABYへ- 以上が,グローバルなNIMBY問題のあらましです。これをNIABYに,つまりNot In Anybody’s Backyardにするためには,それぞれの国で,例えば日本なら日本で,電子廃棄物を外に出さない,国内で完全に処理できる施設や設備がなくてはいけません。当事者原則の厳格な適用ですね。しかし,残念ながら,世界はそういうふうには動いていない。 アメリカでも日本でもそうですが,先進国は,往々にして,まだまだ使えるからというので中古品として輸出にまわします。それはリサイクルで,環境にやさしい,いいことだとなっている。確かに,まだちゃんと使えて動いている分には,その通りです。しかしそれだって,いつかは動かなくなるわ

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