信州ブックレットシリーズ003
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25汕頭市(貴嶼村)の現状からみる中国の経済発展と循環型社会構築への課題がある。故郷に比べれば,こんな労働でも高い収入をもたらすので,いくらでも補充可能なのです。資本と物流網を持つ「地元民」と,安い労働力を提供し,汚染労働をいとわない「外地人」の相互依存によって,電子廃棄物解体産業は可能になっているのではないか。これが私たちの分析です。 それに対して,政府はどうしているのか。中国政府は,それなりに頑張って,法的な規制を強めています。WTO(世界貿易機関)にも入りましたし,北京オリンピック,上海万博もやって,さまざまな環境法制を充実させてきています。その中には,電子廃棄物を直接に扱う法律,例えば「輸入中古機電製品検験監督管理弁法」という法律があって,一応規制されていることになっています。 もうひとつの方法として,リサイクルを,ある特定の地域にだけ認め,そこにはちゃんとした処理施設を設けるという手法もあります。浙江省あるいは天津にあります。再生資源の輸入適正化のために,沿岸部に「リサイクル団地」が作られ,この「リサイクル団地」以外では,外国製品の中古品の輸入は認めない,という規制をやっています。 しかしながら,こうした法の網をくぐって,実際にはいろいろなことが行われています。インフォーマルな収集業者や中間業者などを介して,インフォーマルなかたちで処理物質が貧困地域に流れ,それが流通している。フォーマルなリサイクル会社にとっても,もっと安い価格でインフォーマル物資があるので,政府の言うとおりにやっていたら採算は合わないという仕組みになっているわけです。 地方行政は,どう対応しているのか。これが,汕頭市の環境政策・制度の問題です。汕頭市は,先ほど言ったように環境モデル都市でした。しかも,貴嶼が行政に組み込まれたのは,モデル都市になった後からでした。はじめは,市の周辺開発地域として,その地域を含めた経済発展ができると期待した。しかし逆に,お荷物になりそうな要因を抱え込んだ,という面があるわけです。 貴嶼村は,2003年の行政区画の変更により,汕頭市に編入されました。

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