信州ブックレットシリーズ003
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23汕頭市(貴嶼村)の現状からみる中国の経済発展と循環型社会構築への課題的に発展していますから,国産を日本製品や欧米商品にどんどん買い替えていくというような需要があります。いわゆる中間層が増えて,廃棄物を出す大都市が,近くにあるわけです。 実際に,貴嶼における電子廃棄物の流れを見ますと,流入のルートは,相当はっきりしています。一番大きい排出国は,もともとアメリカと日本です。それから香港,台湾,ベトナムにいったん送られて,それが深圳,広州を通して,この村にやってくる。 古いコンピューターは,時には箱ごとで送られてきます。そこでまず,そのまま2次利用が可能なものは,仕分けられ修理されます。中古品として売られるビジネスで,貴嶼には,大きな中古電器製品の販売店街があり,近隣からも多くの客を集めています。それらは,地元の汕頭市だけではなくて,広州や深圳,場合によったら上海まで送られていて,立派な中古市場が生まれています。 しかし,この2次利用に使えないものは,再生可能部品と最終ゴミになります。その際に,きわめて原始的な手法で解体され,金属やプラスチック,カーボンまでが取り出されている。その回収された金属は,福建,江蘇,浙江などの金属加工工場に持ち込まれる場合と,現地の銅加工工場,アルミニウムの合金工場,鉄の錬成をするところ等に送られる場合があります。 プラスチックについても,深圳や福建にある工場に送られ,高品質のプラスチックには再生できませんので,おもちゃのための原料にされる。プラスチック造花,旧正月や祝い事の花にするのが,大きな商売です。これが深圳や東莞のおもちゃ工場へ転売されて,東南アジア諸国へ輸出される。あるいは,クリスマス用品として世界中に流れる。 貴嶼村の社会関係と中国政府・汕頭市の対応 中国の中で,この問題を研究しているのは,私たち一橋大学のチームと一緒にやっている汕頭大学と,もうひとつ,広東にある中山大学の人類学の人たちです。その現地報告によれば,ここに階層性が入り込むようです。 中山大学のチームは,汕頭の企業経営はどうなっているのかと,ミクロの問題まで分析しています。汕頭には,元来,「地元人」と「外地人」という,

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