信州ブックレットシリーズ003
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22低賃金でも貴嶼に人が集まってきます。 それから,中国も法制度や環境モデル都市ではずいぶん頑張っているのですが,日本や先進国に比べれば,まだまだ環境規制が弱い。 それを商売にして,一旗揚げてお金を儲ければ,中国では,もう一流のビジネスマンとして,ほかの「きれいな仕事」に移っていくことができます。 最終廃棄物までいかなくても,中古品をちょっと直しただけでも,中国ではまだ売れるマーケットがあるわけです。 そういうものが,プルの要因になって,こういう現象が起こっているといいます。 しかも,中国自身が,なお経済発展をしています。中国国内からの電子ゴミが,どんどん出るようになりました。先進国に比べればまだ少ないのですが,何しろ人口が14億人いますから,出てくる量は,巨大なものになります。ちょっと古い統計ですが,2003年の中国における家電製品ゴミの排出量は5,148万台で,アメリカが1,800万台でしたから,その数倍ですね。パソコンは448万台となっています。 この問題について,私たちは,汕頭市当局の環境副局長に,インタビューをしています。彼にいわせれば,「われわれは,国内が今経済発展しているから,その汚い部分を引き受けているんだ」と,認めるのです。けれども,「海外の分はない」と言う。でも実際に見てみると,パナソニックとかエプソンなどが,いっぱい出てくる。それが,この村の実際です。 なぜ汕頭市貴嶼村に,電子ゴミが集積するようになったのか。それにはもうひとつ,経済地理的な事情があります。中国広東省の深圳,東莞のあたりは,行ったことがある方も多いと思いますが,電子産業が発達した先進工業地帯です。ですから,それに伴った廃棄物リサイクル産業が,もともと存在していました。 それから,東南アジアや香港に近い海岸線にあるために,港があるわけです。そこに国外から流入してきます。貴嶼村の場合にも,香港経由で中国に入ってきて,最終的にここにやってくるというケースが多い。また,広州とか深圳は,それ自体が中国の中での巨大な電器商品のマーケットです。経済

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