信州ブックレットシリーズ003
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21汕頭市(貴嶼村)の現状からみる中国の経済発展と循環型社会構築への課題 それから生産地,つまり工場は,今や,先進国から中国,インド,ベトナム,東南アジア等に移って,そこで製品がつくられる際に,生産にあたっての廃棄物が出るようになっている。 先進国の場合,中古品や廃棄物を処理するリサイクルそのものに,膨大な労働コストがかかります。ましてや手作業で,使い切ったはずのプリンターのトナーから黒いカーボンを取り出すというような作業は,日本で言えば3K労働以下になって,誰もやろうとしない。先進国では,そういう「汚い仕事」は,高い労働コストから,敬遠されます。 環境規制も強化されます。特に日本の場合には,家庭ゴミがこんなに出るからゴミ処理場を近場につくるというだけで,典型的なNIMBY問題になります。つまり,「確かに必要だ。しかし,うちにだけは勘弁してくれ」と,こういうことが必ず起こって,住民運動になり,紛争が起こる。 先ほど言った,技術進歩の加速と製品のライフサイクルの短縮が,これに輪をかけます。 では,なぜ,そんな誰も使いそうもない,本当にゴミになったパソコンや携帯電話の残骸を,中国やインドでは引き受けるのか。これが,プル要因です。プル要因・資源不足・安価で大量の労働力の存在・相対的に緩い環境規制・ビジネスチャンス・安い中古品の需要 ひとつは,そういう廃棄物でも,例えばプラスチックを細かく砕いて再利用することでも,中国でやれば,まだ採算に合う部分があることです。 もちろん,安価で大量の出稼ぎ労働力があります。貴嶼の村で,実際にこの商売をやっているのは地元の名家の人たちで,どんどんお金持ちになっています。四川省など地方の農村から,「あそこに行けば仕事があるそうだ」と,

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