信州ブックレットシリーズ003
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13汕頭市(貴嶼村)の現状からみる中国の経済発展と循環型社会構築への課題たところに,「電子ゴミ」が入るようになり,その解体・最終処理がこの村で行われるようになりました。 現在,21の村に,300軒以上の企業,といっても家内工業が多いのですが,5,500以上の家庭,6万人以上の従業員が,電子ゴミとプラスチック処理産業に従事しています。年間処理量は155万トンで,再生プラスチック95万トン,金属55万トン,中古電子部品の5万トンに加工されている。リサイクルだけなら,これこそ「環境モデル都市」にふさわしいのではと思われるかもしれませんが,このリサイクルのやり方が大変原始的で,現地の人たちも言うんですが,「21世紀の最先端の製品を,19世紀のやり方で処理している」̶̶そういうところなのです。 この問題が,世界に知られるようになったのは,アメリカのNGO,Basel Action Networkが,2002年に撮ったドキュメンタリーでした。アメリカで使われたパソコンの電子廃棄物がどこに行くのかを追いかけていったら,中国に行き着いて,その村には,アメリカだけではなくて,日本のソニーやパナソニックまで含めて,世界中の電子ゴミが集まっているようだと報道され,世界に知られるようになりました。 アメリカの国内で使われ,リサイクル用ということで集められた古いパソコンは,旧型の携帯電話などと一緒に,どうやら回り回って中国とインドに向かった,というテレビ番組です。 DVDにもなっているNGOレポートの,リサイクルの最後の最終処理場では,私自身も実際に目撃したんですけれども,例えばプリンターのトナー・カートリッジの中に黒いカーボンが少し残っていますが,これをナイフで切って,中に残っているカーボンをブラシと手で取り分けて,それを大きなドラム灌みたいな容器に貯めて,いわゆるリサイクル・トナーを作る。本当に原始的な手仕事なんですが,その作業を,マスクもしないで,若い10代の女性がやっているところが,この地域に行くと,普通に見られます。

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