信州ブックレットシリーズ003
14/32

12 汕頭市貴嶼村の現地調査から 今日のこの報告は,汕頭大学助教授の許寿童さんと,私の教え子で,今オーストラリアのジェームズ・クック大学に留学しております中澤高師さんとの,3人の調査にもとづくものです。私たちが滞在した汕頭大学も,在外華僑資本の入ったモダンな大学で,構内に大きな湖があって観光地になるような,大きな広いキャンパスで,優雅なところでした。 ところが,その汕頭市のダウンタウンから車で1時間近く行ったところが,行政区画としては汕頭市内なのですけれども,その外れにもうひとつの汕頭市の姿,つまり先ほどから申し上げている貴嶼村という,世界の電子ゴミの集積地があるのです。 実際には,この貴嶼村は,20 世紀には汕頭市内ではありませんでした。2003年の中国全体の行政区画の変更によって,汕頭市が広域化し,そこに編入されて,汕頭市の一部になりました。つまり,旧市街,海岸線の工場地帯では,ゴミの分別処理もきちんと行われ,2000年制定の「国家環境保護模範都市」の称号にふさわしかった汕頭市に,市の広域化で生産力をあげ,もっと大都市になろうと周辺地域を組み込んだところで,貴嶼村も行政単位に入ってきた。そのため,汕頭市の「国家環境保護模範都市」という称号自体が,2004年には危うくなった,という次第です。 汕頭市の中の,貴嶼のある地域は,人口は13万人ぐらいですから,市の中では小さな周辺地です。そのなかが,さらに27の鎮(村,集落)に分けられるのですが,そのうちの幾つかが,ゴミ回収で経済発展をしている問題の地域で,中国全土から労働力を集め,ある程度の経済効果をあげている,という関係になります。 その地域は,もともと農業生産をやっていましたが,地表が低いために穀物生産は安定しなかったので,20世紀の初めから,アヒル,ガチョウの羽,ブタの骨,それから金属スクラップ,プラスチックの回収などをやるようになりました。それが1980年代末から1990年代に,世界のIT化が進んでいくにつれて,もともと普通のプラスチック廃品,リサイクル玩具などがあっ

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です