信州ブックレットシリーズ003
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10 地図の上では,中国の,最も工業的に発達している地域のなかにあります。上海と香港の間です。近くに,深圳市や東莞市もあります。広東省の中の,汕頭という港町で,日本ではあまり名前が知られていませんが,500万都市です。日本で言えば大都市です。 汕頭市の中心部は,海岸線にあります。もともと漁港があり,貿易も盛んでした。その近くに,地図で言いますとちょっと陸地のほうに入ったところに,貴嶼「鎮」があります。日本でいえば「村」にあたります。汕頭という大きな500万都市の中の片隅に,「貴嶼」という村があって,その村が,世界からの電子ゴミの,集積地になっているのです。 冬に行っても暖かい,亜熱帯のモンスーン気候のところで,昔から知られているのは,海産物の産地で鮮魚の美味しい所です。「汕頭刺繍」と言いまして,衣料品に手で縫ってつくった刺しゅうのハンカチとかレースの敷物等でも,有名なところです。 歴史的には海上交通の要衝で,多くの華僑を輩出し,海外とのつながりがもともと強かった地域です。港の近くに住んでいる人たちの中には,親戚がアメリカや香港,シンガポールにいる人が多いということが,この問題を理解する際の,ひとつの背景になります。 1981年には,経済特区に指定されました。つまり,中国の海岸線の上海,深圳等が経済発展を遂げる時期に,汕頭市も巻き込まれ,中国全体の中では経済的に進んでいる地域になりました。市当局の資料には,主な産業は,電子情報,紡績服装,プラスチック加工,食品加工,機械装備,おもちゃ,印刷等とありますが,先ほど言いましたように,わりと有名なのは,「紡績服装」つまり刺繍と,もうひとつは「電子情報」と書いていますが,実は電子ゴミのリサイクル品を,中国各地に卸していく産業です。 「国家環境保護模範都市」・汕頭市 私たちがこの村に注目した,もうひとつの理由があります。汕頭市は,2000年に中国政府から「国家環境保護模範都市」に指定されました。日本風に言えば,「環境モデル都市」です。一橋大学の「アジア環境プロジェクト」で,中国の環境政策を研究する際に,私たちは,この「国家環境保護模範都市」

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