信州ブックレットシリーズ002
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21企業における「CSRと生物多様性保全」の取組がもたらす恩恵であると。それからこういう旅行に行ったりとかして楽しむとか,心が癒されるとか,そういったものも,生態系から受けるサービスとして捉えるということです。我々は知らず知らずのうちに享受しているわけなんですけれども,それが失われてしまうと,かなりの損失を受けるということを認識することが重要だろうというふうに思います。 このような議論は,ちょっと非常に難しい部分もあるんですけれども,企業にとりまして,2006年にブラジルのクリチバで行われたCOP8あたりから身近な問題になってきました。このCOP8で,企業を中心とする民間部門も,もっと積極的にこういう問題に取り組んでいくべきだという決議がなされました。私は2003年から2008年まで経団連の事務局におりましたが,この2006年の前後を境にして,かなり企業の認識が変わったというふうに思っております。それまでは,社会貢献的なものを余裕があればやりましょうよ,というふうな姿勢の企業が圧倒的に多かったのではないかなというふうに思います。美しい自然を守ることはいいことだなというふうな,そういう発想で多く取り組まれてきたのではないかなというふうに思います。 しかし2006年以降,政府もさまざまな取組をされており,我々ともいろいろな場で協議させていただく中で,理解を深めていったわけなんですが,これは余裕があるからやっていこうよというものでは済まされないという感じに変わってきたなというふうに思います。 それ以降の動きを見てみますと,2007年に環境省さんのほうで第三次の生物多様性国家戦略を策定され,翌年の2008年には生物多様性基本法が制定されております。それから同じ2008年にCOP9がドイツのボンで開催されました。それを受けまして,2009年には,先ほどの経団連の生物多様性宣言と,環境省さんがまとめられました生物多様性民間参画ガイドラインというものが出来ております。こういうものが出来てくる中で,具体的に企業としてどういう取組をしていったらいいかということが,よりクリアになってきたなということでございます。そして,いよいよ今年,COP10ということで,さまざまな企業が独自のガイドラインとか取組の方針とか,そういうものを発表されておるという状況です。

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