信州ブックレットシリーズ6電子書籍版
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を最大にし、消費者は満足を最大にするように行動する」というバーチャルな考え方を社会の基本に据え、リアルなシステムの方をバーチャルな世界に近づけようとしているように見えて仕方がありません。 しかし、人間の脳は、本来的に経済学が想定しているような、利益を最大にするという単純な図式に基づいて反応をするのではなくて、きちんと社会に協力しようということが本質的に脳の中にビルトインされている。人間には、少なくとも、脳のレベルでは、まだ社会的な面で大きな可能性がある。従って、その可能性を、ニコニコマークのようなナッジを使って、うまく開発できれば、倫理的消費はまだまだ伸びる余地があるということになります。ニコニコマークだけなら、予算や規制はほとんど要らない。その意味では、非常に面白い議論だなと思いました。 いずれにしても、私どもの社会システムには、まだまだ工夫の余地がある。商品やサービスの開発の分野でも、いろいろなことができますし、それからマーケティングの方でも、先ほど紹介したように、新しい考え方がどんどん出てきていますので、こうした考え方をふまえて、サステイナビリティ(持続可能性)という問題について、生産と消費の双方において工夫をしていくことが大事なのではないでしょうか。 実は、そういったことを経営教育の中でしっかり実証的に考えていかなければいけないと思っています。サンマルコスの実験は大きな反響を呼びました。すでに、ニコニコマークのようなナッジを活用するコンサルタント会社もカリフォルニア州で営業していますし、行動経済学者が、米国や英国の政府に協力して、ナッジを活用して予算節約などを行うというような例も出てきています。90

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