信州ブックレットシリーズ6電子書籍版
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 そうしたら、どうなったかたというと、平均値を超えている人たちは、これはまずいということで、エネルギー節約に一生懸命、取り組みました。しかし、平均値を下回っている人たちは、もうちょっと使ってもいいんだなということで、かえってエネルギー消費量が増えてしまった。 ここまでは、人間の本質を表していまして、特別なことはないのですが、この実験には、まだ、先がありました。この実験をしたカリフォルニア州立大学の先生方は、ちょっとした工夫をしました。それは、各世帯への毎月のエネルギー消費量の通知書に「ニコニコマーク」(スマイルマーク;☺)を付けることにしたんですね。正確には、スマイルマークと、サッドマークですが。ニコちゃんマークです、皆さん知っていますね、簡単なマークですが。その月のエネルギー消費量実績が、地域の平均エネルギー消費量を超えている世帯には「サッドマーク」、それから、平均エネルギー消費量を下回っている人には「ニコニコマーク」を付けたんです。 これにより、何が起きたかというと、平均エネルギー消費量を超えている世帯は、サッドマークで怒られているわけですから、もうちょっと、努力してみようということになりました。その結果、わずかですが、マークを付けないケースに比べて、エネルギー消費量の減少がみられました。他方、エネルギー消費量が平均より少ない世帯では、このニコニコマークを見た途端に、褒められて喜んで、さらにエネルギーを節約しようという取り組みになって、非常に大きな効果がありました。実は、油断してしまう現象を、心理学では「ブーメラン効果」と言うのですが、そのブーメラン効果が消えたという結果になりました。この社会実験は、行動経済学のモデルケースの一つとして、紹介されることがあります。この実験におけるスマイルマークは、「ナッ88

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