信州ブックレットシリーズ6電子書籍版
86/104

はCreating Shared Value、すなわち「共通価値の創出」を意味しています。ポーターはフリードマンの議論の2つの前提を問題視しています。フリードマンは、企業にとって経済的利益と社会的利益はトレードオフの関係にあると仮定して議論を進めています。しかし、ポーターは、企業が経済的利益を求めて、それが社会的利益につながるケース、一石二鳥のケースというものもたくさんあるはずだと主張しています。また、フリードマンは市民社会の構成員である株主個人に社会的行動を求めますが、ポーターは、企業の組織的な行動による社会貢献は、株主個人の行動より効率的、効果的であることを指摘しています。 CSVは、企業と社会が共同で価値を創出していこうということですから、経済目的の実現は、同時に社会的目的にも寄与することとなります。ただし、具体的な事例でトレードオフが成り立たない関係はそれほど多いとは言えないという批判があります。例えば、ポーターは、トヨタのプリウスは経済的目的と環境対策を両立させているのでCSVだと言っていますが、皆さん、どう思われますか。 いずれにしても、経営学の権威の一人、マイケル・ポーターが提唱した理論ですから、社会には一定の影響が見え始めています。最近、日本でも企業の「CSR部(本部)」が「CSV部(本部)」に代わる動きも出て来ていまして、一種の流行になっていると言っても良いかも知れません。4.価値共創と企業経営のパラダイム変化⑴ 価値共創と企業経営の進化 CSRの議論をさらに進めて、企業というものを最近の経営学がどう捉えているのかを考えてみましょう。私は、消費者と経営者による「価値共創」という概念に注目しています。プラハラード(C.K.プラハラー83

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です