信州ブックレットシリーズ6電子書籍版
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の経済」というふうに定義をしています。 私はこの定義を少し拡張したいと考えています。例えば、長野県の中山間地においても、「生存の経済」ということは非常に重要であると思います。金融市場のような典型的な市場経済とは別の原理で動いている生活の営みを考えなければいけません。自給自足経済ではなくても、最貧国経済ではなくても、コミュニティの中での相互扶助やボランティアといった面が重要な意味を持つ経済は我々の身の回りにも多く存在しています。私たちは、市場経済だけでなくて、あるいは市場経済と自然の経済だけではなくて、市場経済と自然の経済と、それから、人々の生存・生活ということについて、この三つの宇宙を調和させていく必要があるのではないかということなんですね。 ハート教授の論文が衝撃的だったのは、生存の経済、すなわちBottom of the Pyramid、アフリカや南米の一部の非常に厳しい自給自足的な生活を送っておられる方々の世界には、いわば、アメリカ流に言う1つのビジネスチャンスがあって、そこにグローバル企業が積極的に貢献すべきであるとの考え方です。貢献することによって、新しい経済の発展と豊かさがそこに生まれてくるという議論なんですね。 しかし、私は、繰り返しになりますが、こうした生存の経済というのは、どこにもあると思います。私自身も、やがて生存の経済に一層強く巻き込まれることになる。「高齢化」ということですね。超高齢社会の中で、「生存の経済」をどういうふうにコントロールするのかということについては、さらに議論をしていく必要があるのではないかと考えています。 ハート先生は、問題を解決するために、企業が実行できる三つの方法を提案しています。三つの経済が衝突する宇宙であるとすれば、地78

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