信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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ンドへ逃げた。そこから先の避難場所は,防災計画では決めていなかった。具体的に決めていなかったし,練習もしていなかったから,校庭より先は,どこへ行くのか分からない。 そういう中で,子どもたちが「逃げようよ」と言っているけれども,教師たちは話し合っているだけで動かない。そのときに親御さんが迎えに来る中で,川の水が異常に引いていることに気がついている父兄もいたけれども,みんなばたばたしているので,先生にそのことを伝える間もなく,子どもを引き取って帰ってしまった。 先生も,学校からは川の水は見えない。堤防を上がって行かないと見えなかった。もし見に行って確認していれば,違った対応ができたかもしれませんが,それもしなかった。 結果的に,校庭に50分ほどとどまっていたことで,津波にのまれてしまった。ほかに例のない大惨事になってしまった。 事前から適切な準備をして,日ごろから地域住民,地域ぐるみで訓練をしていたかどうかという点が大きかった。また,防災教育に対して,大川の教育委員会は冷淡だったという話もあるので,学校現場での取り組みの違い,そういうところの濃淡の差も出たのかもしれません。(2) リスクの許容水準とリスクの認知水準その時のために常に備えるこれはアメリカ軍の言葉なので雑な英語が入っていますが,メッセージとしては同じことです。Proper prior planning and preparation prevents piss-poor performance.「適切な事前の計画と準備は,最悪の行動を防ぐ」と。まさに,釜石の事例がそうです。 釜石の事例に引きつけて考えますと,三陸海岸に住むことは,大津波がいつか必ず来るリスクを許容するということです。これは,65

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