信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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員無事。途中,親が迎えに来たなどで学校管理下から外れてしまったお子さんたちは,親子ともども津波で死亡ということになってしまったのです。それらの方を含めた生存率は99.8%,学校管理下では100%ということになるわけです。なぜ,このようなことができたのか。 「釜石の奇跡」とメディアでは言われるようになりましたが,釜石小学校の6年生男子のコメントは非常に的確で,「ぼくたちは,学校で学んだことを実行して,いのちを守ったんだから,全員助かったことは奇跡じゃなくて,実績です」と言うのです。 なぜ,このように言えるようになったのか。群馬大学の片田敏孝教授は,釜石の津波防災の取り組みで社会的に知られるようになりました。①「想定にとらわれるな」,②「最善を尽くせ」,③「率先避難者たれ」という「避難の三原則」を挙げられて,釜石の子どもたちに教えられてきた方です。避難の三原則 それは,まず「想定にとらわれるな」ということで,端的に言えば,ハザードマップを信じるなと言っています。右側の図は見にくいかもしれませんので,お手元の図を見ていただければと思います(地図は省略)。ハザードマップで黒塗りになっているところと,グレーになっているところが,津波到達地域と想定された場所です。それに対して,大きく太い実線で外回りを囲っているのが,現実に3・11のときに津波が到達したエリアです。 このハザードマップを信じて,「うちは大丈夫だから」という方のところで,実は多くの津波死亡者が出ています。ハザードマップで津波被害地域と指定されていたら,それは逃げます。けれども,指定されていなかったから大丈夫だろうと思っていたところで,皮61

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