信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
67/87

がインフルエンザにかかるときの死亡リスクは高いので,高齢者がインフルエンザ・ワクチンを打つことによって,そのリスクを避けるベネフィットを本人が受けるわけです。そうであるならば,副作用のリスクも本人に負ってもらいましょうと。 老人を守るために子どもに打つのではない。老人がベネフィットだけ受けて,副作用のリスクは子どもが負うということではない。ワクチンを打つことで,インフルエンザによる死亡リスクを避けるベネフィットを受けるならば,そのコストとして,ワクチンによる副作用のリスクも老人本人が引き受けるべき,という考えになってきました。便益を受ける人間が,そのコスト,リスクも引き受けるべきだというように,両者を一致させたという意味では,合理的な政策になりました。 東京大学の廣野喜幸准教授が指摘するように,インフルエンザの予防接種では,より必要なターゲットに対して便益と費用の負担が一致するかたちで行われるようになったと言えるかと思います。Ⅲ リスクに備える:   リスク対応のネットワークと組織能力(1) 釜石の奇跡:東日本大震災の経験釜石市の津波防災活動 最後にリスク対策です。東日本大震災(2011年3月11日)での「釜石の奇跡」について,報道などで聞かれたことがありますか。『NHKスペシャル』でも取り上げられていたので,ご覧になった方はよくご存じかと思います。 これはすごいんです。どういうことかというと,釜石の小学生1,927人と中学生999人のうち,学校管理下にあった児童・生徒は全60

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です