信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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クチンを打つことのベネフィットは,風疹にかかるリスクが大幅に低下することですが,これは特に妊婦にとって深刻なリスクを回避できることにつながります。さらに,このベネフィットには,社会の接種率が高くなるほど,個人のリスクも低下するという正の外部効果が期待できます。リスクは,通院時間や医療費などの経済的リスクに加えて,低い確率での副作用ということになります。 一方,ワクチンを打たなければ,通院時間や医療費はかからず,副作用も発生しません。リスクは風疹のリスクが低下しないことであり,妊婦の場合,周囲の感染状況によっては深刻なリスクに曝されることになります。さらに,社会の接種率が低いと,それだけ感染リスクが高まる負の外部効果が懸念されます。 代替手段について確認すると,効果的な治療法はなく,ワクチンによる予防が最も重要です。結局のところ,各人の状況に応じてリスクとベネフィットを勘案して,ワクチンを接種することが期待されているのが,現状だと思います。しかし,個人の判断というものはそれほど合理的ではなく,副作用の確率を過大評価するバイアスも考慮に入れる必要があります。いずれにせよ,このような判断を個人任せにすることの難しさ図表17 風疹ワクチン接種のベネフィットとリスク出所)筆者作成。ベネフィットリスク接種する風疹のリスクが大幅に低下接種率向上の正の外部効果あり副作用がわずかにあり通院時間,医療費がかかる接種しないワクチンの副作用なし通院時間,医療費がかからない風疹のリスクが低下しない接種率低下の負の外部効果あり58

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