信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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こちらの場合は比較的,容認しやすいですね。こちらのミスは,社会的に許されやすいから,一応,法律でもそうなっている。法律で明言しておけば,多少の誤報をしてしまっても問題がないということで,積極的に通報がいく。虐待による死亡という最悪の事態を避けることを最優先した考え方です。対抗リスクの社会的受容 対抗リスクについて,社会がそれをどう受け入れるのか。現実に児童虐待の通報ミスは受け入れている。しかし,認可した医薬品に深刻な副作用があったという判断ミスについては,現状の社会では受け入れていなくて,訴訟になっているわけです。それで国が敗訴するようなことになると,国はより慎重な対応になります。 社会的に,対抗リスクをどう受け入れるのか。あるいは,どこまでなら容認するのか。これは,どこまでなら免責するのか,という問題と関わってくるので,簡単には結論は出ません。ただ,考え方の筋としては,こういうところを押さえておく必要があります。 どちらかの間違いを減らそうと思うと,もう片方が上がってしまうような状況にあるから,そういう場合,どちらのエラーをどこまで受け入れるのかという社会的な合意が得られるかどうかが,肝心です。それが得られていないと,どうしても担当者が自分の責任を回避するような行動に出てしまうことになってしまいます。(5) 予防接種法の改正と風疹の流行生かされなかった警告 そういう意味では,予防接種行政が,言ってみれば,失敗例としてあるわけです。1994年の法改正によって,それまでの集団接種,強制接種から,任意接種へと変わりました。それによって接種率が54

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