信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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という判断の,2×2の組み合わせを考えてみます。「ある」「ある」と,「ない」「ない」の組み合わせだったら,現実と判断が一致しているから正しいことになる。けれども,もう一方の,「ある」「ない」と「ない」「ある」の組み合わせは,正しくない。実際には「ない」けど,「ある」と思った。逆に,実際には「ある」のだけど,「ない」と思った。そういうふうに現実と判断が食い違っているので,そこに二つのパターンのエラーがあるというのが,ここでの話です。 両方のエラーは同時に減らすことができなくて,どちらか一方のエラーを減らそうと思うと,もう片方のエラーが上がるというディレンマがあります。トレード・オフの関係です。何も工夫しないと,一般的には,そうなります。行政判断における二つのエラー 行政の場合は,問題が「ない」にもかかわらず,行政が「ある」と考えて余計なことをしてしまったのが,第1種のエラーで,「作為による過誤」と呼びます。自分からやってしまったミスということです。先ほどの環境ホルモン,内分泌かく乱化学物質をめぐるSPEED'98の政策対応は,この第1種のエラーに相当します。 もう一つが,行政が対応すべき問題が「ある」のに,「ない」と,誤って判断することです。これはやりがちですが,「不作為の過誤」と言います。第2種のエラーです。本来,対応しなければいけないところを何もしなかったので,望ましくない結果が起こった。問題があるのを放置したあやまちです。水俣病などの公害問題での政策対応がその典型です。 問題があるのを放置するという第2種のエラーを避けようとして,予防原則を適用して早めの対応をしようとすると,問題がないのに「ある」と判断してしまう第1種のエラーを犯しやすくなります。46

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