信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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いということが,この図に表れています。 あと触れておくのは,参照点です。判断基準となる参照点は主観的なものなので,動かすことができます。つまり,利益が得られるプラスのメッセージになれば,人はリスクを回避するような行動をとるようになります。また逆に,それが損失と受け取られるようなメッセージになると,リスク志向的な選択をするようになります。このように参照点という心の中の判断基準をコントロールすることで,リスクに対する態度をコントロールできるということです。 状況が悪いと認識しているとき,事態を曖昧にして先送りにする傾向が,プロスペクト理論からも言えるわけです。危険か,危険ではないか分からない,とりあえず様子を見るかというような感じになってしまうということです。(3) 演習:2種類の判断エラー偽陽性と偽陰性 不確実性下の意思決定では,判断エラーの問題もあります。統計学をどこかで勉強された方はいらっしゃいますか。第1種のエラー,第2種のエラーと聞いたことがありますか。「過誤」と漢字で書いてありますが,英語ではerrorです。Type Ⅰ error,Type Ⅱ errorとなりますが,意思決定には二つのエラーがあります。 それはどういうことなのか,医療が分かりやすいですね。がんの検査を受けて陽性と出た。だから,精密検査を受けた。そうしたら,実際にはなかった。そういった場合,最初の検査の陽性は,本当の陽性ではない。実際にはがんではないけれども,「がんです」という検査結果が出ているので,これは「偽陽性」,偽りの陽性です。最初の検査で陽性と判断したけれども,本当は陰性,がんではなかった。ですから,偽陽性で,病気が「ある」と誤って判断した。44

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