信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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(2) プロスペクト理論:心理学に基づいた意思決定理論利得と損失の非対称性 プロスペクト理論については,行動経済学の本など,いろいろなところで目にする機会があるかもしれません。先ほど出てきたトヴェルスキーとカーネマンが考えたもので,心理学に基づいた意思決定理論です。 ある基準があって,そこから利益を得られるときと損失を受けるときとでは,人間の意思決定の態度が違います。具体的には,次の二つの選択問題が有名です。 最初は収入が得られる場合の質問です。①確実に1万円を得られるか,②コインを投げて,つまり2分の1の確率で表が出たら2万円,2分の1の確率で裏が出たらゼロ。 どちらを選びますかと聞かれたら,たいがいの人が,①を選ぶかと思いますが,一応,聞いてみます。人によってはどうか分かりませんので。結果は,①が4人で,②が1人と。 次は,同じような質問ですが,損失額についてです。 ①確実に1万円を失うか,②2分の1の確率で2万円を失うが,2分の1の確率で損失ゼロ。 どちらを選びますか。①の方が2人,②が3人で,微妙な割合になりました。損失含みの問題は面白い反応が出ました。①の選択は損切りを早く行うということです。損失を早く確定する。金融マンとしては優秀になりそうな感じで,損失を先送りしない。大やけどをしないうちに処理しておくと。②の選択は,損失先送りのタイプです。とりあえず様子を見るという傾向です。 利得が得られるようなときには,確実性を求めて,①を選ぶ人が多く,損失を受ける場合には,なるべく損失額を確定させたくないという心理が強くはたらいて,②のほうを選ぶ。利得の選択問題は41

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