信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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事態とはなかなか認めない傾向のことです。これが行き過ぎると,自分にとって都合の悪い情報が見えなくなってしまいます。状況を無視してしまったり,あるいは,リスクを過小評価したりすることにつながる。 集団でいる場合には,さらに相互作用がはたらいて,「集団的無知」という状況に陥ります。他人に依存する行為なのですが,何かが起きているようだけれども,ほかの人が,特に経験も豊富で,年齢も地位も上の人が何とも思っていない。普段通りだから,たぶん大丈夫なんだろう,と考える状態です。 付和雷同ということですが,権威的な人,あるいはリーダーと思われている人がリスクと思っていないから,たぶん大丈夫なんだろうということです。自分の判断ではなくて,集団の中において有力者の判断に従っているといいますか,それに依存して主体的な判断を放棄しているような状況です。パニック神話 最後のバイアスの「パニック神話」は,管理側の話です。まれにしか起こらないパニックを管理者が過度に恐れることです。パニックが起こるには,いくつかの条件を満たす必要があります。四つとか,三つの条件があると言われていますが,複数の条件を満たす必要があるわけです。パニックというのはそもそも,そんなに頻繁に起こるような現象ではない。 しかし,群衆はすぐにパニックになるものだというふうに思い込むのが,「パニック神話」です。行政とか,一般大衆を管理監督する側が勝手にそう思い込んでしまうわけです。それによって,どういう悪影響が出るのかというと,結果的には,パニックを恐れて,必要なタイミングで情報を提供したり,避難指示をしたりすること39

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