信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
44/87

確認して葛藤や不安を消す。これは非常によろしくないわけです。こういう心のメカニズムが強くはたらいていると,逃げ遅れてしまって命を落とすことになってしまうからです。 この認知不協和の理論はレオン・フェスティンガーが考えた非常に強力な理論で,いろいろなことが説明できます。 たとえば,喫煙です。喫煙習慣が肺がんを引き起こす。これは,今はもうはっきり分かっています。しかし,たばこは吸い続けたい。こうなると,認識と行動の間で矛盾するわけです。 それをどこかで調和しなければいけないので,たばこを吸う行動は変えることが難しいとしたら,認識のほうを変えて,たばこ以外にも危険なものはいっぱいある。また,たばこをずっと吸い続けても長生きした人もいる。そうやって自分に都合のよい事実を見つけて,自分がたばこを吸い続けるという行動と矛盾しないような認識をつくりだして,心の中の葛藤を消す。ストレスを緩和することをします。 場面によっては,こういう心のメカニズムは生きていく上で必要ですが,それが,ある不適切な場面にはたらいてしまうと,結果,命を落とすことになってしまうこともあります。想起容易性バイアス 次に,「想起容易性」バイアスがあります。想像しにくい出来事,たとえば,規制によってどんなベネフィットが得られるのか分かりにくい場合,その規制によって削減されるリスクを過小に評価してしまう。自分があまり想像できないことに関しては,過小評価してしまう。あるいは,非常にインパクトの大きい出来事,テロとか,SARSなどの新しい感染症が広まっているといった場合には,逆にそれに強く引きつけられるかたちで,リスクを過大に評価してしま37

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です