信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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あります。しかし,「バイアス」というのは決して悪いものではなくて,進化する過程で人間が必要としたものだから備わっているのです。ただ,それが状況によっては,マイナスにはたらいてしまうということです。 まず,人はリスクを評価するのが非常に苦手で,過剰に反応したり,無視しやすいという特徴があります。これは無意識的な心の動きです。それを知っておくことは必要で,また,実際にその無意識に支配されないように普段から備えて行動しておくことが,後の話につながっていきます。バイアスにとらわれて望ましくない結果になることを避けなければなりません。 重要なバイアスに「認知不協和」があります。人間は,信念とか心情に関して,基本的に一貫性を好みます。一貫性を欠いたときには,それを維持したい欲求がありますから,そのために事実の認識図表11 主な認知バイアス出所)フェスティンガー(1965)18-24頁;サンスティーン(2012)61-70頁;ロベルト(2010)211頁;広瀬(2004)11-12,128-149頁を参考に筆者作成。名称特徴認知不協和二つの認識の間に一貫性を欠いたときには,それを維持したい欲求があるため,事実の認識を変化させる(合理化する)。想起容易性バイアス想像しにくい出来事の場合,リスクを過小評価する一方,劇的な出来事の場合,リスクを過大評価する。確率無視バイアス最悪の事態が起きる確率ではなく,最悪のシナリオそのものが思考と行動に影響を与える(リスクの過大評価)。正常性バイアス多少の異常事態が起こっても異常事態とは認めない傾向のこと(自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価する)。集団的無知何かが起きているようだが,周囲の人(特にリーダー的存在の人)が何とも思っていないから大丈夫だろう,と考える。パニック神話まれにしか起こらないパニックを,管理者が過度に恐れること。①この結果,避難に必要な情報の提供や避難の指示が遅れる ②防災上の失策の隠蔽目的で,群衆のパニックを理由に使う35

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