信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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は認められないということになりました。 生殖異常というリスクがリスクとして認知されなかったわけです。極論すると,べつに食べるわけでもない,人間の食用でもないイボニシが減ったから,だからどうなのかと。それは生物多様性の減少だということだけれども,それがどう関わってくるのか。それを重要だと思う人もいれば,そんなリスクよりも,もっと重要なリスクがあると言う人もいて,避けるべきリスクに関する認識が共有されなかったわけです。 地球温暖化なども,そういうものに入ってきます。ヨーロッパの人たちは,気候変動のリスクに関して非常に敏感ですが,アメリカの場合,気候変動リスクには冷淡で,むしろテロのリスクに対して過剰に反応しています。 つまり,何をリスクと見るのか。社会集団で共有した認識がないと,それに対して積極的に削減しようという動きが起こらないわけです。ですから,社会的リスクとして認知されることが重要です。これは,最後にもう一度振り返りたいと思います。 これでセクションⅠが終わりました。リスク論の基本的な内容から,その限界まで一緒にやっているので,いろいろなものが頭の中に入ってしまっているかもしれません。Ⅱ リスクに気づく:認知バイアスと判断エラー(1) リスクの認知バイアス認知不協和の理論 リスクに気づくためには,「認知バイアス」と「判断エラー」について知っておいたほうがいいかと思いまして説明します。 図表11には主なものをまとめていますが,いろいろなバイアスが34

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