信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
39/87

やっている地域の消防団員もいるので,リスクCの分母では,日本の総人口から,職業としての消防職員の数と,ボランティアで協力している消防団員の数を引いています。つまり,消防活動に関わっていない一般市民を分母にして,消防協力をする中で命を落とした一般市民のリスクになっています。 このように,A,B,Cの各リスクは,計算上分母と分子をそろえてあります。重要なのは,分母が違うことによってリスクの大きさが全然違うということです。この場合,消防活動のリスクとして,どれがいいのか。 ところで,あまり意味がないのは,消防士の死亡リスクを日本の総人口で割ることです。分母と分子が一致していません。分母と分子を一致させるにはどうするのか。分母と分子の質をそろえること。日本の総人口で割るなら,消防士・消防団員の死亡者と,消防協力した一般人の死亡者を足し合わせた数を,分子にしなければいけません。 ですから,A,B,Cは,そういう意味では分母と分子の間での一貫性はあるのですが,ただ,分母にどれをとるかによって,リスクの値が大きく変わってくる。一般市民のリスクCは,プロのリスクBよりも三桁から四桁,死亡リスクが低いわけです。 消防活動のリスクと言った場合には,職業上のリスクを考えるのが妥当であり,リスクBの筋が通っている。つまり,消防士の世界の中での死亡率です。 セクションⅠでリスクの比較基準を扱った際には,人口10万人当たりのがんの死亡者数や,落雷による死亡者数の計算では,一般人口が分母です。分母にどんな集団をとってくるのかでリスクの値は変わるので,そこは気をつけなければいけません。32

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です