信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
32/87

の生命価値を簡単に計算できます。一人当たり5億円なので,そこに150人を掛けて,750億円。したがって,大気汚染対策の効果を金銭換算すると,750億円ということになります。費用便益分析 問3について,この政策に500億円を投ずるのは合理的なのかという判断ですが,これはちょっと難しいです。この政策だけで考えるならば,500億円を投じて750億円のベネフィットが得られています。750億円-500億円=250億円のプラスになりますから,この政策を行うことは合理的だと判断できます。コストを上回るベネフィットを得ることが実現できますから,この政策を実行するための正当化の根拠になるわけです。 しかし,ほかにも政策があった場合にはどうなるのか。予算が限られているので,どちらかの政策しか実行できないという場合,別の政策のほうが同じコストでより多くのベネフィットを生み出すのであれば,そちらを採るという選択肢もあり得ます。 また,例題は単年度のものですが,何年度にもわたって便益や費用が出る場合には,割引率のようなものを使って現在の価値に戻すという多少の計算の工夫は必要になってきます。しかし,基本的な考え方は,演習の例題と同じです。 このような費用便益分析をすることによって,その政策を実施すべきか,実施すべきではないかということに対して,議論する土台はできます。ただ,この場合,数量化するとか,確率計算ができることが前提になっています。確率を使うことによって,リスクが計算できるし,統計的生命価値も出てきます。確率的な考え方を受け入れる,あるいは,それらが許される状況であるならば,こういう環境リスク論的なアプローチや費用便益分析は,政策的には非常に25

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です