信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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 このような考察にいたってDDTが解禁され,マラリア感染者が再び減少していきました。全面使用から全面禁止へと両極端に振れた経緯がありますが,最終的には目的を明確にした限定使用という合理的なリスク・マネジメントを実行できた事例です。合理的なリスク・マネジメント 次の内容に入る前に,いま一度,リスク・マネジメントの基本を確認しておきます。リスクの定量化から始まって,複数のリスクを比較する。その複数のリスクの中でも,特に対抗リスク,あるリスクを削減すると,必然的に別なリスクが高まってしまうということに注意する。そういう場合にどうするのかというと,リスクの性質が同じという前提が成り立つのであれば,足し算して,足し算した値を一番低くする方法が,リスク・マネジメントとしては有効だということになります。(7) 統計的生命価値の考え方命の価値とは 次に,確率を使うことで「こういうことも言えるのか」と,私も初めてこの考え方に接したときには,非常に衝撃を受けた内容を紹介します。確率でリスクを捉えることで,命の価値を考えることができるのです。 ただ,気をつけなければいけないのは,この場合の命の価値は,人口集団に対して当てはまるものです。たとえば10万人に1人,100万人に1人,残念ながら死ぬ,という場合の話です。特定個人が死ぬリスクは考えられないのです。名前が付いた個人の命はかけがえのないものだから,金銭的な評価はつけられないわけです。 ちなみに,生命保険がありますが,あれは命の価値ではありませ21

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