信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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その代わり,マラリア感染者が増加することになります。 リスクの大小を比較してみると,生態系のリスクとして室外散布は大きい。けれども,室内散布であるならば,生態系に与える影響は小さいだろう。人の健康リスクの場合には,DDTを禁止するとマラリアが流行りますから,極めて大きな健康リスクがある。一方で,使うとわずかな副作用が出ますので,そういう意味では,がんや神経障害のリスクは小さいながら,ある。 そうすると,WHOが言ったように,室内散布に限ってDDTを使用するのが,ベストな選択になるわけです。代替手段の確認 ただし,そう言えるためには,最後に代替手段があるかどうかも検討しなければいけない。リスク・マネジメントを行うためには,まず主な用途をあげて,次に用途別にベネフィットとリスクを比較して,最後に代替手段の有無を確認する。代替手段に関して,農薬用途としては,DDTに代わる農薬はいくらでもあります。DDTが環境に深刻な影響を与えるのならば,環境への影響が少ない,生態系への影響が少ない農薬に切り替える,それはできます。 しかし,マラリア蚊を殺虫する手段として,DDT以外の有効な手段がなかった。やはり,これを使うのが一番だということになった。そうであるならば,DDTは,殺虫剤に限って使用を認めるのがベストだ,しかも室内散布だ,となりました。壁にシュシュッとやっておくと,蚊の習性で壁に止まったとき,DDTが効率よく付着する。空気中に噴霧すると,人間も吸い込む可能性があるので,人体への影響も無視できないけれども,壁に吹き付けておくならば,蚊に対してのみ有効な割合が高まるので,そうすることによって,さらに人間の健康リスクを低くすることは可能であると。20

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