信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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 しかし,それには良し悪しがあります。良い面は,比較が可能になることです。あるいは,数字ですから,足し算や割り算で計算ができるようになる。リスクとコスト,リスクと便益の割合などを計算することができる。また,数字で「見える化」するので,リスクの認知を促すことができる。それらが定量化のメリットになります。(4) 複数のリスクを比較する客観確率と主観確率 客観確率とは,ゆがみのない六面体のサイコロを十分な回数振れば,それぞれの目が6分の1の確率で出るというものです。しかし人間は,客観確率を客観確率として評価していないことを心理学の実験から明らかにしたのが,エイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンの二人です。カーネマンは,2002年にこの分野の研究でノーベル経済学賞を受賞しています。 トヴェルスキーとカーネマンは,人間は確率を主観的に評価する傾向があることを発見しました(図表3)。つまり,低い確率は現図表3 客観確率と主観確率出所)Tversky & Kahneman(1992)p.310を参考に筆者作成。バイアスなしバイアスあり客観確率1.00.80.60.40.2000.60.40.20.81.0主観確率10

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