信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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ることが,明快な議論につながります。 ただ,受ける影響によっては,何も「がん」とか「死」とは限らないわけです。深刻なまひが体に残るとか,死ぬことはないけれども,健康が大きく損なわれる。また,先日のカネボウ化粧品の白斑被害は,もちろん命に関わる症例ではありませんが,美容を大きく損なうものです。外観を大きく損なうものですから,女性から見ると,生活の質を大きく引き下げる要因になってしまうわけです。 そういう単に,死・発がんでは,はかれない損失をどうはかるのかという中から,「損失余命」という考え方もあります。平均余命からどのくらい減ったのか,このリスクによって1日寿命が縮んだと,そういう基準もあります。許容水準と繰り返しの頻度 次に,どれくらいの頻度で許容するのか,という点です。発がんリスクでは,10-5のリスクが許容基準となります。10万分の1の確率です。この程度のリスクであれば,受け入れてください,という意味です。 繰り返しの頻度という別の観点から見ると,日常生活の行動の繰り返しは,生涯でカウントしても,だいたい数万から十数万回です。1日2回,車の運転をする。そうすると,365日×2=730。仮に100歳まで生きたとしても,7万3,000回,車に乗る。1日2回,毎日乗って100歳まで生きたとしても,桁としては数万のオーダーです。その中で1回,死亡事故を起こす頻度を受け入れましょうと。 100年後には,多くの人は間違いなく100%の確率で死んでいる。寿命が100歳を超えている人も,たまにはいますが。だから,生涯に1回起こる確実な死の割合くらいは受け入れてもいいのではないか。日常的な行為の回数の頻度から言っても。もうちょっと安全の8

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