信州ブックレットシリーズ5電子書籍版
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が通常の認識かと思います。リスク論と環境リスク リスク論では,大きさや変動の幅も含めて,さらに,それが起きる確率を組み合わせる。計算としては掛け算をします。環境リスクを例に挙げれば,次のようになります。環境リスク=ハザード×発生確率(摂取量,曝露量) ハザードとは,危険性や損失の程度のことで,生物や人間に与える負の影響の大きさを意味します。発生確率は,化学物質や放射線であれば,体内に吸収される量や曝露量になります。いくら有害な物質でも,体内に取り込まれない限り,リスクとは考えないのが,環境リスク論の発想です。毒性がすごく強い物質でも,うまくクローズドされて,人間がそれに直接曝露されないような条件が整っているならば,リスクとしては低くコントロールされている。このように,リスクとハザードを区別するのが,環境リスク論のスタンスです。 環境リスクは,カバーする範囲が非常に広く,地球環境や生態系から,労働環境,あるいは生活環境,食の安全などの食環境。日照権や,近所に廃棄物の処理施設ができるなどの住環境に関わる問題などがあります。これらを含めて,全てが環境リスクの範囲に入るわけです。 したがって環境リスクの場合,価値観の違いが大きくなります。ある環境リスクに対して,ある人は非常に高く認識するけれども,別の考え方の人は,それを低く認識する。そこの価値観の相違が,ほかのリスクと比べて大きいので,環境リスク固有の特徴として,合意の難しさがある。これは,後に触れたいと思います。 もう一つの特徴は,環境リスクは非常に低いリスクの場合でも,影響を及ぼす範囲が広いことが少なくありません。ですから結果的5

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