• 研究群長挨拶

Message 研究群長挨拶

世界に誇る特色ある研究を研ぎ澄まし、「2025年の崖」に立ち向かう
~新たな融合研究領域の創造を目指します~

 2014年(平成26年)3月、信州大学は、大学創設以来長年にわたって培ってきた研究の特長と強みを伸ばすために、カーボン科学研究所、環境・エネルギー材料科学研究所、国際ファイバー工学研究所、山岳科学研究所及びバイオメディカル研究所の5研究所からなる先鋭領域融合研究群を設置しました。2016年(平成28年)10月には、次代の研究所を目指す研究グループとして、5つの研究センターからなる次代クラスター研究センターがこれに加わりました。この間、信州大学先鋭領域融合研究群は、社会が直面する困難の克服と新しい価値の持続的な創出を実現するため、従来の思考の枠組みと専門の枠を超えた俯瞰力と想像力で、新たな課題に果敢に取組んできました。そして、今やこの先進的な研究群は、信州大学の研究力をアピールする際の代名詞的役割を果たすような存在にまでなりました。そのような中、研究群はこの度、設置時の制度設計(信州大学先鋭領域融合研究群規則第5条)に従い、この5年間の活動を点検・総括し、2019年(平成31年)4月1日から新しい研究群へと生まれ変わりました。

 研究群設置から5年の月日が流れましたが、このわずかな間に、世の中はデータ集約型の学術研究が科学の中心に位置するようになり、ビッグデータ駆動型の技術革新が必須の時代へと大きなパラダイムシフトが起こりました。オープンアクセスジャーナルの急速な普及と相俟って世界の科学技術はビッグバン的進歩を遂げつつあります。改組に際しては、「世の中の変化の兆候を的確に捉え、また社会動向から将来を見通したものとすべきである。」ということが大前提とされました。こうして、新しい研究群には、本学の先端的、革新的研究の牽引役となる組織(研究所)と本学の強みと特色を活かした領域を延伸するための組織(特定領域研究拠点)の二つの枠組みを設けることとなりました。一年半に及ぶ議論を経て、前者には先鋭材料研究所、バイオメディカル研究所及び社会基盤研究所の3つが、後者には国際ファイバー工学研究拠点、山岳科学研究拠点、航空宇宙システム研究拠点の3つがそれぞれ設置されることになりました。

 スワームAI(群知能)、XR(クロスリアリティ)あるいは5G(第五世代通信)といった第四次産業革命が生み出すデジタルテクノロジーの進化は、今、世界の在りようを根底から変えようとしています。SNSを介したグローバル化・ボーダーレス化の進展は留まるところを知らないようでもあります。近ごろ経済産業省は、「DXレポート」なるものを公開しました。DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略語で、今、地球上で密かに進行している不可逆的な社会構造の変化(相転移のようなもの)を意味しています。この大きなうねり、この時流に乗ることが出来なければ、わが国の国際競争力は一気に低下し、年間12兆円規模の経済損失が発生するとの試算もあります。経済産業省は、このようなこれから日本企業が直面するであろう状況を「2025年の崖」と呼んで警鐘を鳴らしています。2025年(令和7年)は、第二期先鋭領域融合研究群の最終年度にあたります。新しい研究群では、DXを念頭に入れた研究を戦略的に推進し、わが国が「2025年の崖」に果敢に立ち向かうことのできる基盤を提案します。そして、わが国の、世界の明日の明るい未来を切り開いていくエンジンの役割を果たしていきたいと考えています。

 留まるところを知らないアーバナイゼーションの連鎖の中で、現代社会はまさにVUCA(Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧さという4つのキーワードの頭文字から取った新造語)の時代を迎えようとしています。この「予測困難な時代」の中で、先鋭領域融合研究群はこれからも、データ(知識)集約型社会に向かおうとしているトレンドを絶えることなく先取りし、将来を見通し、情報発信を続けていきます。ステークホルダーの皆様方からの変わらぬご支援ご協力ご鞭撻のほど、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。
信州大学先鋭領域融合研究群長
副学長(研究企画・戦略担当)
森川 英明
MORIKAWA Hideaki
信州大学先鋭領域融合研究群長
副学長(研究企画・戦略担当)
森川 英明
■職 名
学術研究院 教授(繊維学系), 工学博士
■職 歴
1984年信州大学大学院繊維学研究科修了
1984年花王株式会社
1990年県立新潟女子短期大学講師
2003年信州大学繊維学部助教授
2006年-2007年デンケンドルフ繊維研究所(ドイツ)
客員研究員
2008年信州大学繊維学部教授
2021年信州大学繊維学部長
2021年信州大学副学長(研究企画・戦略担当)
■研究分野
繊維工学
蚕糸科学
システム工学
■研究テーマ
繊維を基盤としたバイオインスパイアードマテリアルに関する研究
極限環境下で身体保護機能を有する新規繊維材料に関する研究
絹形成過程の統計的特性に関する研究
蚕の営繭行動の統計的解析
シルクナノファイバーの創製と応用に関する研究
繊維の機能加工に関する研究
デジタル技術を用いたファブリック/衣服の設計評価