• 群長インタビュー

Interview 群長インタビュー

世界に誇る、特色ある研究をパワーアップ!
先鋭領域融合研究群、開設3年目
―中村宗一郎新研究群長に聞く―

 信州大学の特色ある研究を重点的に進める先鋭領域融合研究群。カーボン科学研究所、環境・エネルギー材料科学研究所、国際ファイバー工学研究所、山岳科学研究所、バイオメディカル研究所の5つの研究所からなり、それらの融合的研究を進めることを目指すこの組織が開設してから、早くも3年目を迎えた。
 開設当初より群長を務めた濱田州博現学長の後継として、二代目群長を務める中村宗一郎理事・副学長に、同研究群開設2年の到達点と今後の展望について聞いた。
【文・毛賀澤明宏】

先端研究の推進と若手研究者の育成

―研究の選択・集中・融合の成果は?
 先鋭領域融合研究群は、ここ2年間、社会が直面する困難の克服と新しい価値の持続的な創出を実現するため、従来の思考の枠組みと専門の枠を超えた俯瞰力と想像力で、新たな課題に取組む研究環境の整備を進めてきました。若手中心の専任研究者の集中、外国人特別招へい教授との協働、学系や分野を超えた融合と協働の体制構築などを進め、フロンティアファイバー、バイオメディカル、ファイバー、ナノカーボン、水処理、エネルギー貯蔵デバイス、複合材料、蓄電池、燃料電池、山岳科学などの領域で優れた成果を生んでいます。
―注目するべきプロジェクトは?
 例えば、体内埋め込み型歩行アシストサイボーグプロジェクトや、体に装着したまま血圧などを長時間にわたり測定できるウエアラブルバイタルサイン測定システム開発プロジェクトなどは、近い将来に社会実装が可能な優れた取組みです。文科省の革新的イノベーション創出プログラムに採択されているアクアイノベーション拠点(COI)と連携した水資源循環技術の開発研究もナノカーボンやファイバーなど信大の強みを活かした世界的な研究です。その他、枚挙に暇がありません。
―研究成果は教育体制への反映は?
 こうした先鋭領域融合研究群の研究成果を信州大学の教育体制に反映させるために、学科横断の教育プログラムを実施したり、2015年度には理学部と農学部の改組を行なったりしました。2016年度には工学部と繊維学部、理工学系研究科(修士課程)の改組も予定しています。そもそも、教員組織を、教育組織(学部)から分離し、3学域10学系の学術研究員を設置したのもその一環でした。先鋭領域融合研究群は信大改革の牽引車としての役割も果してきているのです。

象徴は3人のライジングスター

―若手研究者育成で特筆するべきことは?
 2016年1月6日に、信州大学で初のライジングスター(Rising Star=通称RS)認定教員の辞令交付式が行われました。RS教員は、先鋭領域融合研究群に配置した新進気鋭の若手研究者の中から、特に優れた人を選び、その分野でのリーディングスペシャリストへと成長してくれるよう、研究資金や研究時間の確保や業績評価の面などで優先的に支援する制度です。
 ナノファイバーを大量に創出するエレクトロスピニング法を開発し、ナノファイバーの様々な活用法を開発している金翼水(キムイクス)准教授(国際ファイバー工学研究所)。多能性幹細胞(iPS細胞)を使った再生医学を社会実装の一歩手前まで進めている柴祐司准教授(バイオメディカル研究所)。そして、信大が生んだ健康法=インターバル速歩の定着率や効果を遺伝子や心理指標など様々な視点から掘り下げ、超高齢社会における運動を核にした予防医学の確立を研究する増木静江准教授(バイオメディカル研究所)。この3人のRS教員の誕生こそ、先鋭領域融合研究群の2年間の歩みを象徴するものだと思います。

次代クラスター研究センターの設置へ

―先鋭領域融合研究群の新たな挑戦は?
 先に述べたような成果を踏まえて、新たな歩みを始めなければならないのですが、5つの研究所での、またそれら相互の、「クロスブリード」(領域・学系を超えた融合と協働)による発展を通じてこれまでの研究をさらに進展させることが柱であることは言うまでもありません。
 これに加えて、先鋭領域融合研究群では、5つの研究所の他に、さらに、数年後には新たな研究所として機能することが期待できる「研究センター」を設置することにしました。それらを総称して「次代クラスター」と呼ぶことにしています。28年度には、この研究センターを担うアイデアを持った教員集団を募集したいと考えています。
 現在の5つの研究所の研究を一層高めると同時に、研究群の研究の裾野をさらに広げる試みです。
―評価の客観的基準は何に求める?
 研究の成果をどのようにして評価するかは様々基準があり難しいところですが、何より、「ネイチャー」誌に代表される科学誌に掲載される論文数が重要です。また、その論文が重要であれば、世界中の研究者たちがそれを引用するわけですから、引用された数=被引用数も重視します。被引用数において、繊維材料分野や複合材料分野などが世界的にも上位に入っており、更なる上乗せを図りたいと思います。
 また、世界の大学ランキングで、信大は現在600位から800位のグループ内に、位置していますが、それを、もうワンランク上の500位から600位のグループにまで上げたいと思います。そのために効果が大きいのが論文の数と質であり、その意味でも、先鋭領域融合研究群が果たすべき役割は大きいのです。

人文・社会系にもウイングを拡大

―理工系と人文・社会系の融合は?
 先ほど「次代クラスター」のことを話しましたが、ぜひ、人文・社会系の教員の皆さんにも積極的に手を挙げていただきたいと願っています。ナノカーボン、ファイバー、機能性材料、蓄電池、燃料電池などの先端研究は、今や、マーケティングやライフデザイン、美術・芸術とも深く関わってきているし、「長寿」というバイオメディカルの一つのテーマも、食やそれを支える農業や地域の暮らし・文化の面からも研究が深められるべきだと思います。世界有数の長寿地域である長野県の特性にこだわり、それを文理融合の視点から包括的に研究していくことは、きっと世界中の人々の役に立つと思うし、信大の強みを磨き上げることにつながると思います。

国際社会の安定と発展への貢献を目指して

―研究群長としての抱負・夢は?
 冒頭にも述べましたが、先鋭領域融合研究群が目指すことは、社会(ひと・まち・くらし)が直面する困難の克服と新しい価値の持続的創出です。信州という地域に根ざして、ここで生起している困難を克服するために、グローバルな視野と、専門研究者の枠を超えた協働を創り出して行けば、それは必ずや、国際社会の安定と発展につながると確信しています。招へい研究者をはじめ海外に拡がるネットワークも十分に活用し、この信州から国際的な研究を拡げて行きたいと思います。
中村群長
信州大学 先鋭領域融合研究群長
理事・副学長、農学部長
中村 宗一郎
Soichiro Nakamura
■職名
学術研究院 教授(農学系)/博士(農学)
■経歴
1976年島根大学卒業
1976年宇部短期大学助手
1981年宇部短期大学講師
1991年宇部短期大学助教授
1994年鳥取大学大学院連合農学研究科博士課程修了
1994年宇部短期大学教授
1994年ブリティッシュコロンビア大学農学部
リサーチフェロー
1999年島根大学教授
2000年ブリティッシュコロンビア大学大学院
アジャンクトプロフェッサー
2005年信州大学農学部教授
2010年信州大学農学部長
2012年信州大学副学長
2014年信州大学学術研究院農学系長
2015年信州大学理事
信州大学先鋭領域融合研究群長
■研究分野
食品化学
■研究テーマ
免疫機能改善効果やアミロイドーシス予防抑制機能をもつ特定保健用食品(FOSHU)の開発
タンパク質の構造機能相関に関する研究