信州大学

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Director's Interview研究所長インタビュー

最先端の生命科学研究を世界に発信し
異分野融合研究で境界領域の新知見発掘に挑戦する

世界を牽引する生命科学研究のイノベーションを!

「信州大学ではこれまでも医学部と農学部が協力して、独自の生命科学研究を進めてきました。その成果を継承発展させながら、更なる分野横断的な研究の融合により、境界領域に潜む新知見を多数発掘したい。また、新たな挑戦を牽引できる若手研究者を輩出したいと思っています」。バイオメディカル研究所長に就任した齋藤直人教授は現在の抱負をこう話す。信州大学医学部で学んだ後、整形外科・リハビリテーション科の医師として活躍する一方、生体材料や再生医療などの研究を進めてきた。2004年からは、信州大学が誇るナノカーボン複合材料を、安全性を担保した生体材料として世界で初めて臨床に用いることをめざし、医療界から高い期待が寄せられている。「学問としての生命科学の基本を守りながら、他領域の研究との境界にある新しい宝を見つけ出し、世界的水準の研究に発展させていく。そういうワクワクするような仕事を推進したいですね」。─齋藤所長の視線は常に世界に向けられている。

4つの研究部門と研究所の目標

バイオメディカル研究所は、先端疾患予防学、神経難病学、バイオテクノロジー・生体医工学、代謝ゲノミクスの4つの部門から構成される。それぞれが高度な専門性を持ち、独自の粘り強い研究が求められるが、各部門が独立して研究を進めるのではなく、プロジェクト主導の流動的な組織を構築する。これにより、研究所内から分野横断的融合を創出することを目指すという。研究所としての目標は、冒頭の齋藤所長の言葉にもあるように、第一に信州大学独自の生命科学研究の推進。第二に、先鋭領域融合研究群の他の研究所や学部間の連携、他大学との連携、産学官地域の連携、さらには国際的な連携を通じた、特に境界領域に潜む新知見の発掘。そして第三に若手研究者を育成し、世界と戦えるスーパースターを輩出することだ。

先鋭領域融合研究群の基本理念を具現化

その中でも齋藤所長が強調することは、バイオメディカル研究所と先鋭領域融合研究群の他の4つの研究所との連携・融合。自身が、ナノカーボンを生体材料に応用する研究を進めていることもあり、生命科学と材料工学、ファイバー工学、環境科学などとの境界領域に様々な新しい研究テーマが潜んでおり、その発掘と研究の進化が、信州大学の特色ある研究を〝世界オンリーワン〟に押し上げていく大きな糸口になると確信している。「そもそも先鋭領域融合研究群は、そういう目的を持って新しく設置されました。地方の国立大学が総合大学という強みを活かして独自の発展を進めるには、それぞれの領域の核になる研究が分野を超えて融合し、新たな〝知〟を創造しなければなりません。バイオメディカル研究所は、この取り組みを生命科学の領域から牽引したいと思います」と力をこめる。

世界的研究者となる若手の育成を

先鋭領域融合研究群とバイオメディカル研究所が進化するための最後の鍵は、若手研究者の育成だ。2015年の現時点で、信大の生命科学研究を担う医学系・農学系の分野に、〝宝〟ともいうべき先端研究がいくつも展開されている。バイオメディカル研究所は若手研究者の世界一流学術誌への論文掲載や競争的資金の獲得などを援護射撃し、研究テーマの選択と集中を進め、世界と戦える重点研究が研究所全体を牽引できるようにマネジメントする。特に次世代を切り拓く可能性のある研究を進める有望な若手研究者を、研究環境・待遇などを含めてバックアップする。齋藤所長が目指すのは、異分野融合による基盤研究を充実させ、4年後の2019年には、世界と戦える最先端研究を推進する理想的な体制を構築することである。バイオメディカル─この世界激戦区の研究領域でも、信大は他に類を見ない、新たな一歩を踏み出そうとしている。

信大NOW88号(2014年7月31日発行)より

先鋭領域融合研究群 バイオメディカル研究所長
バイオテクノロジー・生体医工学部門長
学術研究院 教授(保健学系)/博士(医学)
齋藤 直人
Naoto Saito