超分子複合体部門/Department of Supramolecular Complexes

微生物由来超分子複合体ダイナミズムの解明と応用

研究内容と特色
 近年の微生物学・応用微生物学の発展により、遺伝子工学・タンパク質工学研究、創薬・抗生物質開発、発酵・健康食品開発、腸内細菌叢・マイクロバイオーム研究、新エネルギー・バイオ燃料開発など、現在盛んに繰り広げられている微生物関連研究は、社会的要請や社会の変化等に対応して、さらなる発展を続けており、期待と魅力に満ち溢れている。そこで、本部門では、微生物のダイナミズムを分子レベルで解明し、応用することを目指す。特に、微生物ダイナミズムの根源とも考えられる「超分子複合体」に焦点を当てた基礎研究及び応用研究を展開する。超分子(Supramolecule)とは、複数の分子が共有結合以外の様々な相互作用により秩序だって集合した分子群である。タンパク質や核酸をはじめとした多くの生体高分子は、複数の分子同士やさらに金属や低分子化合物の補因子等と共に複合化して超分子複合体を形成して、複雑かつ高度な機能を発揮している。様々な生体分子の相互作用が織りなす動的な超分子複合体形成は、まさに生命ダイナミズムの源であると考えられ、微生物由来超分子複合体の研究は、生命ダイナミズムの理解や応用に貢献することが特色である。今後、内外の研究者との連携による共同研究も積極的に推進し、シナジー効果による高いインパクトの研究成果を上げ、社会的要請にも対応した微生物利用や超分子複合体応用のイノベーションにつなげる。

研究テーマ例
1. 微生物によるタンパク質ナノブロック超分子複合体の創製と応用(新井)
最近、独自の人工タンパク質を活用したタンパク質ナノブロック(PN-Block)を設計開発し、自己組織化により樽型6量体構造や正四面体型12量体構造等のタンパク質超分子複合体の創出および大腸菌による大量発現に成功してきた。いわば、微生物による新たなナノテクものづくりであり、さらに自己組織化超分子複合体の詳細な構造機能やダイナミズムを解明し、ナノバイオマテリアルや人工ワクチン開発等への応用も目指す。

2. 乳酸菌ゲノム由来DNAナノカプセルを用いた免疫誘導機構の解明と応用(下里)
 昨年、胃液に溶けず腸まで届くDNAナノ粒子超分子複合体(DNAナノカプセル)の開発に成功し、強力な免疫抑制作用を有するオリゴDNAをカルシウム粒子に包摂したDNAナノカプセルの経口投与により、アトピー性皮膚炎の発症を抑制することを発見した。今後、本研究は、家畜やヒトの健康維持・増進のための経口型免疫誘導剤としての応用を目指す。

3. 細菌バイオフィルム形成制御の転写因子複合体ダイナミズムの解明と応用(小笠原)
大腸菌等の細菌種は、過酷な環境下において、多糖やアミロイド線維タンパク質等から成る超分子複合体の膜で覆われたバイオフィルム細菌集落を形成する。これまでに、バイオフィルム形成制御に関わる複数の転写因子による協調的な遺伝子発現制御機構や機能未知遺伝子を含めた新規支配下遺伝子群を明らかにしてきた。今後、40種以上におよぶ転写因子が関与する超分子ダイナミズム機構の全容解明を目指す。

4. シグナルペプチド非依存的な小胞体へのタンパク質輸送機構の解明と応用(細見)
真核生物細胞内において分泌シグナルペプチドはタンパク質の小胞体内腔への輸送に必須のものと考えられてきたが、最近、出芽酵母においてシグナルペプチド非依存的なタンパク質輸送機構を発見した。また、シグナルペプチド非依存的な輸送が著しく促進される変異体も同定している。そこで、これらに関わる超分子複合体形成機構の解明、酵母のシグナルペプチド非依存的輸送促進変異体を用いた微生物大量発現系の確立を目指す。

部門長 新井 亮一(2016年10月01日)