生体調節統合制御部門/Department of Molecular & Cellular Regulation

有用微生物の生体調節機能ならびに疾病予防機能の解析

研究内容と特色
 乳酸菌や酵母などの微生物は、その代謝特性により発酵産物に風味や保存性に影響をもたらすだけでなく、微生物そのものや微生物によって生産させる物質により新たな機能性を獲得することが知られている。近年、このような微生物の生体における認識は、生体での非常に多岐に渡る細胞で行われていることが明らかとなっている。本部門では、循環型・健康長寿社会の実現に向けて、有用微生物が秘める生体調節機能を探索し、疾患予防または加齢に伴う老化進行を抑制する次世代機能性食品を開発することを目的とする。昨年度より食品の機能性表示に関する新たな枠組みとして機能性表示食品制度が設けられ、有用な機能性を活かした食品製品開発のニーズが高まっている。こうした社会の要請に応えることが本ユニットの使命であり、産業振興の礎となるライフ・イノベーションの創出を目指す。

1. 植物性乳酸菌および発酵代謝産物を活用した脳機能改善食品の開発
次世代の機能性食品として、脳機能改善作用を有する機能性食品素材の開発が注目を集めている。また近年、腸内細菌叢と脳機能は密接に関与しており、特定のプロバイオティクスには脳機能改善作用を有することが期待されている。そこで、認知機能低下抑制効果を有する乳酸菌を探索し、脳機能改善に寄与する機能性表示食品の開発に取り組むとともに、新たな付加価値を高めた発酵食品の開発研究を行う。

2. 抗メタボリックシンドローム作用を持った乳酸菌の探索と機能解析
これまで乳酸菌や酵母など食品微生物を対象にした研究を、株化細胞培養系の開発や細胞と生体モデル系を組み合わせたアプローチにより行い、抗炎症作用や抗アレルギー作用を持つ株の取得やその作用機構を明らかにしてきた。今後は腸管上皮細胞や免疫細胞を介してメタボリックシンドローム発症を抑制する乳酸菌株の取得や皮膚角化細胞を介した食品微生物のアトピー性皮膚炎抑制作用の検討などの疾病予防への応用研究に取り組む。

3. 発酵食品および食品由来乳酸菌の免疫調節作用
乳酸菌は様々な発酵食品に含まれ、免疫細胞を刺激して免疫調節作用を示すことが知られている。近年増加している炎症性腸疾患やアレルギー疾患においては、栄養バランスのとれた食事を摂ることに加えて、免疫調節作用をもつ食材を摂取することが症状の軽減や改善において有用であると考えられている。そこで、免疫調節効果をもつ発酵食品および乳酸菌を探索し、免疫関連疾患の予防に寄与する機能性食品への応用・開発につなげていきたい。

4. 有用微生物を活用した機能性糖質の開発
廃棄物の大量発生が社会問題になり、循環型社会の構築が重要となっている。食品廃棄物や農作物非食用部の約70%が未利用である。これらを有用資源として捉え、バイオマス中に含まれる未利用糖質の有効利用や糖質素材の改良に役立てることを目的として、利用に適した微生物と糖質関連酵素の探索を行う。近年は整腸作用など健康との関わりで糖質の機能性が評価され、機能性糖質が多くの食品に利用されている。獲得した微生物や酵素を用いて、将来的には、機能性が期待されるオリゴ糖を、バイオマス資源から酵素反応により生産する。また、糖質の構造を酵素反応により改変して新しい素材を創出する。

部門長 片山 茂(2016年10月01日)