保健学科研究紹介2023
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―28―青木 薫 准教授小宅 一彰 助教信州大学医学部医学科卒業。同大学院医学系研究科博士課程修了。日本整形外科学会専門医。信州大学医学部附属病院リハビリテーション部より2015年に保健学科へ着任。山形県立保健医療大学卒業。信州大学大学院修了(博士・保健学)。理学療法士として回復期病院に勤務後、日本学術振興会特別研究員(DC2)、国際医療福祉大学教員を経て2019年より現職。 整形外科では関節や骨の疾患に対して、人工関節や人工骨、骨固定材料を用いて治療を行います。治療のためにヒトの体に手術で埋め込む素材を生体材料と言います。さらに安全性、治療効果、耐久性に優れた生体材料を開発するため、工学部、繊維学部、医療機器メーカーなどと協力して作成した材料の生体安全性評価を行っています。 また、整形外科医として主に骨軟部腫瘍(「骨肉腫」(骨にできるがん)など)の治療にも従事しています。骨軟部腫瘍についてその治療成績、手術切除範囲、手術後のリハビリテーション・機能、腫瘍切除後の再建方法、骨軟部腫瘍のための「がん教育」についての臨床研究も行っています。 脳卒中患者に対するリハビリテーションでは、日常生活活動の再獲得に向けた十分な身体活動が求められます。一方で、十分な活動量を確保できないと、治療効果が得られないだけでなく、運動不足による二次的な身体の衰えが進行してしまいます。私は理学療法士としての臨床経験から、脳卒中患者の身体活動を制限する問題として、「運動耐容能の低下」や「リハビリテーション意欲の低下」に着目しました。運動耐容能の低下ついては、運動や姿勢変化に対する循環機能ならびに自律神経機能の解析から、原因解明と治療方法の開発を目指した研究を進めています。また、リハビリテーション意欲については、教育工学を応用して効果的な動機づけ方略を開発する研究を行っています。ウサギの大腿骨内に埋め込んだカーボンナノチューブ複合アルミナセラミックスの組織像(1年半)骨内に有害反応なく納まっている。右肩の悪性軟部腫瘍の術後の患者さん。傷は良好に治っているが、腕の挙上制限が残っている。姿勢変化に伴う血行動態の変化脳卒中リハビリテーションでの動機づけ方略に関する医療従事者の合意形成肉腫について、子供たちにも分かりやすいようにマンガを用いた肉腫を紹介するパンフレットを作成。運動開始時の呼吸循環応答研究から広がる未来 人工関節手術や脊椎固定術などを行った患者が、年齢を重ねた際に生体材料の寿命が先に来てしまうと患者の活動性が低下したり、危険の高い入れ直しの手術が必要となります。高機能な新規生体材料の開発により、健康寿命の延長につながることが期待されます。 骨軟部腫瘍の治療においても、患者の命を救うことは当然として、その治療後の日常生活機能が維持できることを目指しています。卒業後の未来像 当専攻では卒業時に国家試験に合格すると理学療法士の資格を取得することができ、病院、診療所、施設などで働くことができます。卒業後、大学院に進学してさらに深い研究を行い、医療の発展に貢献していただきたいと思っています。研究から広がる未来 脳卒中は介護が必要な状態となる原因の一つであり、脳卒中患者の介護予防は本邦において喫緊の課題となっています。 私たちの研究成果は、脳卒中患者に対する新しいリハビリテーション戦略の開発に向けた学術的基盤として、臨床応用により患者の利益となるだけでなく、介護問題の解決や医療費の削減など、関連分野や社会への幅広い波及効果が期待できます。卒業後の未来像 理学療法士の活躍の場は、医療や福祉にとどまらず、スポーツ、国際活動、行政、研究教育など様々な分野に拡大しています。「理学療法学」という学問を学んだ人間として、どのように社会貢献できるか。幅広い視野で、考えていきましょう。応用理学療法学応用理学療法学理学療法学専攻新規生体材料の開発・評価と理学療法学専攻脳卒中患者の活動的な生活を支援できるリハビリテーション戦略の開発を目指して骨軟部腫瘍の解析

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