繊維学部研究紹介
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教員紹介大越研究室では、主に溶融紡糸・延伸による高性能・高機能な合成繊維の製造方法に関する研究・開発を進めています。特にレーザー光を利用した繊維製造によって、生産の高速化、省資源・省エネルギー化に加え、これまでは作れなかった超極細繊維や直径や内部構造を精密に制御した繊維などが作れるようになり、また繊維の構造や性質ができていく過程を詳しく調べられる様にもなりました。研究によって得られた繊維は、医療、光学部財など多くの用途への展開が期待されます。新しい繊維と新しい繊維用途開発を目指して、日々研究に励んでいます。繊維は、もともと鋼鉄よりもはるかに強くて軽く、しかもしなやかに曲がり、表面積も大きい、高機能な材料です。最近ではより高性能・高機能な合成繊維が数多く開発され、航空機・自動車の機体や車体、人工臓器、光学機器、スポーツ用途等に使われ、軽量化や高性能化によって地球環境負荷の低減や人間生活の快適化に役立っています。特に日本の合成繊維企業は、多くの高性能繊維で世界をリードしています。卒業後の進路は、就職先として合成繊維企業をはじめとする素材メーカーを選択する学生が最も多いですが、繊維を使う側のタイヤメーカーや電機メーカー、評価する側の地方公設試に勤めた卒業生もいます。大越豊教授信州大学繊維学部助手、講師、助教授を経て、2006年より現職。研究分野は繊維・フィルムなど高分子材料の成形加工、および得られた繊維などの光学物性や力学物性などの雑学。研究から広がる未来卒業後の未来像写真サイズ高さ9.8cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース高性能・高機能な合成繊維を作る8繊維および繊維集合体の構造形成の制御により環境にやさしく、人間の健康を守る繊維の製造メルトブローン複合紡糸装置繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像一本の繊維の中に千本の島成分がある複合繊維の電子顕微鏡写真合成繊維の製造方法において、最も基礎となるプロセスが紡糸および延伸工程である。本研究室では、複合繊維用紡糸機を利用して、芯鞘型複合繊維、海島繊維などの様々な複合繊維を製造し、また紡糸線上および延伸過程中において複合繊維の繊維構造形成過程を究明して、繊維の使える分野を医療、交通などに広げることを目指して研究を進めている。さらに2014年からは、マイクロX線CTを用いた不織布構造の解析に適用する研究にも挑戦している。この方法により、ニードルパンチおよびメルトブローン不織布の内部構造を非破壊で可視化し、断面内の繊維体積分率や繊維配向度と物性の関係を定量的に評価することに成功した。現在、この成果を元に産学連携共同研究に力を入れている。また国際共同研究や留学生の受け入れなどの国際連携にも積極的である。1 mm 10 mm 15 mm 5 mm Penetration depth of needle: 6.4 mm Penetration depth of needle: 12.7 mm Penetration depth of needle: 19.0 mm MD PE PET ダイコレクター間距離差XCT測定による不織布内部構造の可視化二つ成分を芯と鞘に配置させ、一本にした芯鞘複合繊維の断面写真独自の延伸方法で作製した多孔性繊維の断面写真。中空率63%先進繊維工学コース先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース金慶孝教授韓国釜山大学繊維工学科卒業後、東京工業大学客員研究員、信州大学繊維学部のイノベーション連携センターの助教、韓国特許庁の特許審査官、繊維学部の准教授を経て2019年より現職。研究分野は繊維・フィルムなどの成形加工および不織布の構造解析、その他の専門分野は国内・国際知的財産権。繊維構造形成過程を究明する研究によって構造が制御できれば、高性能タイヤ補強材や高強度フィルタ-用中空糸など産業用材料として繊維の使える分野をさらに広げられる。また、最近の研究では非破壊で内部構造の観察が出来るXCT測定を用いることで不織布の構造を定量的に評価できることを明らかにした。これらの製造および分析手法を繊維集合体の製造工程に適用すれば、環境にやさしく、人間の健康を守る繊維のせいにも役に立つと考えている。基礎的な部分をしっかり知りつつ、繊維関係の科目や研究の面白さを知らせて、繊維産業の応用面も考えられる人材を育成したい。繊維の一番小さい構造から理解すれば、どんな繊維産業の現場で働いても基本から応用までが理解できる人材となれるでしょう。教員紹介

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