繊維学部_研究紹介2020
52/66

エビガラスズメ緑色幼虫。エビガラスズメは日本の至る所に生存する大型のチョウ目昆虫。サツマイモの害虫でもある教員紹介普段目にする「むし」の何気ない現象にも未知の機構がいっぱい。白井研究室では、そんな昆虫の持つ優れた能力を研究することで、将来、私たち自身の生活に役立てようと考えています。例えば、アオムシの色。アオムシは昔から緑色と決まっていますが、ではどうやって緑色になっているのでしょうか?研究を続けると、私たちヒトの様々な疾患の原因ともなる、タンパク質の分泌制御機構が関わっていることが分かってきました。近い将来、昆虫から学んだ知見から人間の病気を治すヒントが得られるかも。タンパク質分泌の制御機構は、現在最も注目されている研究分野の一つです。ペプチドホルモンなどの分泌制御機構の破綻は、昆虫のみならず、我々ヒトにおいても極めて重大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。しかし、その分子機構の解明は意外なほど進んでおらず、未だに多くの謎を残しています。白井研究室ではアオムシの緑色の研究を通じて、哺乳類細胞の研究とは少し違った角度から、この現象にアプローチしています。将来、糖尿病などの疾患の克服に、昆虫の研究が役立つことを期待しています。卒業後の進路として、一番多いのは食品や薬品のメーカー。卒業生の多くが大学で学んだ知識を基礎に、日夜新しい商品開発に励んでいるそうです。また、公務員として、国や県などの研究機関に就職している卒業生が多いのも、この研究室の特徴です。白井孝治准教授農林水産省蚕糸・昆虫農業研究所COE特別研究員、信州大学助手等を経て、現職。専門は昆虫および昆虫細胞を用いた生理生化学および分子細胞生物学。幼虫の真皮細胞から抽出した色素結合タンパク質。このタンパク質にタンパク質分泌制御のヒントが!研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科昆虫の優れた能力と生存戦略を追究し、日々の生活に活かす!教員紹介本邦は少子高齢化により、これまでの社会・経済システムが破綻を迎えようとしています。このような状況下、実は我が国のカップルの5組に1組が不妊症に悩んでいます。驚くべきは、その原因の半数が男性にある、ということです。これまで不妊治療は女性に重きを置いてきたこともあり、男性不妊がなぜ起こるのか、あまり研究がなされておらず、その原因は未だ不明です。今後、欧米中韓等先進諸国が日本に続き同様の状況に置かれることを考えると、『男性不妊』は重要であるにもかかわらず研究が進んでいない『BlueOcean』でもあります。高島研究室は、『精子幹細胞』『ヒト疾患モデル動物』を武器に、男性不妊に戦いを挑んでいます。信州上田の地で共に戦う仲間を待っています!今後人類が必ず直面するであろう『生殖能力低下』問題。実は原因が全くわかっていません。原因が分からなければ、診断も予防も治療もできません。高島研では現在、ヒトの男性不妊を模倣するモデル動物の開発を進めています。これが成功すれば、男性不妊の発症過程を観測することができます。観測できれば干渉できる。干渉できれば支配できる。つまり、この疾患の発症前診断・治療・予防が可能になります。高島誠司准教授学部〜博士課程までを東京工業大学で過ごし、その後東京大学医科学研究所研究員、京都大学医学部助教を経て現職。京都大で精子幹細胞研究を開始、この研究を発展させ、現在は男性不妊症の克服に挑む。精子幹細胞の能力。(左)試験管内で増殖するマウス精子幹細胞。(中)緑色蛍光タンパクを発現する精子幹細胞を移植した精巣。緑色蛍光を発する精子ができている。(右)精子幹細胞由来の精子でできた仔マウス。子供も緑色蛍光を発する(矢印)。研究から広がる未来卒業後の未来像当研究室で学ぶことで、『なんらかの資格が得られる』『就職先が保証される』というような都合のいいことは、残念ながらありません。しかし、世界的に重要でありながら、誰も解決できていない問題に取り組む経験は、今後の人生を歩むうえできっと活かされるはずです。先の見えない将来を案じるよりも、目の前にある重要でオモロイことに目を向けよう!応用生物科学科予防・治療法のない男性不妊と戦う男性不妊の発症原因。病原体への感染や遺伝子変異により発症する男性不妊はほとんど無い。多くの場合、『原因不明』である。この疾患はおそらく『環境要因』『体質(遺伝的要因)』の組み合わせで発症する多因子性の疾患だと考えられる。この病気の仕組みを知るには、2大要因を特定し、その作用メカニズムを明らかにする必要がある。51

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る