繊維学部_研究紹介2020
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教員紹介シルクは、繊維の女王として6000年以上前から利用されている優れた衣料用材料です。また、カイコという生物が生産する環境に優しい生物資源材料でもあります。シルクの衣料分野を超えた新しい利用技術の開発を中心に研究を進めています。絹糸は外科手術で傷を縫うときの糸として古くから現在も臨床で使用されています。また、最近の研究では、シルクから作った材料が、再生医療で細胞の足場として、良い性質を示すことが多く報告されています。研究室では、シルクの医療分野への活用を目標に、シルクの構造や性質を新たな観点で解析し、さらに、新しいシルク加工プロセスの開発を通して機能性シルクの創出を目指しています。2012年ノーベル賞のiPS細胞の開発により、再生医療の実現が近づきました。しかし、細胞のみでは十分な再生治療が期待できない場合もあります。組織を再生する細胞を支える材料の開発も重要な課題です。シルクが、その材料の一つとして治療に貢献でき、われわれの研究が多くの患者さんの幸せにつながることを期待しています。シルクは医療分野のみならず、広い産業分野でも活用できる可能性があります。それらを一緒に見つけませんか?工学・農学・医学という学際的、多彩な業種の業際的な分野の研究となりますので、卒業後は、多様な視点から課題を解決できる人材となって活躍してもらいたいと思います。玉田靖教授京都大学大学院卒業後日本合成ゴム(現JSR)株式会社で研究員として勤務した後、農業生物資源研究所で、シルク利用研究に従事、2013年より現職。専門はバイオマテリアル研究。研究から広がる未来卒業後の未来像カイコ(家蚕)(左)と繭(右)。カイコは、純度の高いシルクタンパク質を環境低負荷で効率良く生産するタンパク質製造工場ですシルクタンパク質(フィブロイン)100%から出来たスポンジ材料。現在、軟骨再生用や創傷保護治療用材料としての研究が進行中です応用生物科学科シルク利用の新分野開拓!再生医療などの医療分野への活用を目指して教員紹介食べるとアレルギーが治る野菜や温暖化でも平気なお米、宇宙船の中でも簡単に育つ果物ができたらどうでしょう?植物が持っている能力を最大限に引き出せば、そんな作物も創れます。植物の遺伝子資源を活用して品種改良を行うのです。昔は何百年もかかりましたが、最新の遺伝子技術を用いれば短期間で計画通りの作物を作り出す事が可能になります。ただし、そのためには植物の遺伝子を詳しく理解しなければなりません。そこで、食物繊維などの栄養分や、病気にかからないなどの育てやすさ、姿・形を制御する遺伝子の研究を行っています。夢のような作物の例として、花粉症に効果のあるお米や、自分で殺虫剤を作って身を守るトウモロコシがもう出来ています。将来は、環境に広がってしまった毒物を吸収して集める草や、電気を使わずに光る街路樹、マンガのように一本の木にチョコ風味やバニラ風味でバナナやリンゴやメロンのような実を代わるがわる作らせることさえも、理論的には可能です。卒業生の多くは、食品・医薬品のメーカーや流通などのバイオ関連企業に勤めて、研究・開発や品質管理・流通管理などの職種で、ここで学んだ専門知識を生かしています。教授がイベント好きなせいか、総務へ行った学生も。林田信明教授名古屋大学大学院卒、理化学研究所勤務の後、信州大学で専任助教授として遺伝子実験施設の立ち上げに携わり、2009年より現職。研究分野は植物分子育種学。植物の能力の最たるものは光合成だが、白い部分はその能力を失っている。その原因を探る事が、光合成そのものの理解につながるハクサイとカブはまるで似ていないが、互いに交配が可能な単一の「種」である。これほど形が異なる原因を解き明かせば、他の作物の形も同じように変えられるだろう研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科グリーンイノベーションで新しい植物を創り出す47

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