繊維学部_研究紹介2020
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教員紹介疾病の時に処方される薬は肝臓で分解されます。その肝臓において中心的な役割を果たしているのが、CYPと呼ばれる酵素です。薬の効き方は、人によって様々であり、副作用の強く出る人もいます。我々の研究室では、このCYPを電極に固定し、適切な薬の投与量を簡便に見極めることを目指したバイオセンサーの開発を行っています。また、珪藻という植物プランクトンはシラフィンというタンパク質を使ってシリカの殻を形成しています。このシラフィンの構造を模倣した高分子を用いることで、新素材としての様々な形状のシリカの作成に成功しています。生体を構成しているタンパク質などの生体分子は多種多様であり、様々な生理機能を発現しています。また、タンパク質だけでも数万種類あり、未解明の機能もたくさんあります。従って、どの生体分子を選び、どのように活用するのかは、無数の組み合わせが考えられます。このように生体物質を工学に応用することで、新しい概念のもとで、新素材などの開発が可能になると確信しています。化学素材、医療機器メーカーなどが就職先として比較的多いですが、学生が興味を持ったどの分野の企業にも対応できるような教育を心がけています。小駒喜郎准教授信州大学大学院繊維学研究科修了後、東北大学にて博士(理学)の学位を取得。1999年から現職。この間、2001-2002年ドイツケルン大学に留学。専門は生体高分子工学。研究から広がる未来卒業後の未来像-1.00E-07-5.00E-080.00E+005.00E-081.00E-07-0.7-0.5-0.3-0.10.1Current(A)Potential(V)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン薬物の種類によって異なる電流電圧応答を見せたCYP固定化電極(バイオセンサーへの活用例)ポリマーの添加による様々な形態のシリカの生成(新素材への活用例)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン化学・材料学科生体物質を工学に応用するバイオセンサーや新素材を目指して教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科『水』の能力を活かしてバイオマスから機能性材料を創る長田研究室では、『超臨界水(高温高圧水)』や『ウォータージェット(マッハ2以上に加速された水)』というちょっと変わった『水』を用いた化学の研究を行っています。自然界では『水』がもつ能力を活かして、日々いろいろな物質が作られています。自然から学ぶことで『水』の機能を最大限引き出し、環境に優しい化学が実現できると考えています。この『水』を使って、有効利用されずに捨てられている農林水産残渣などの地域資源バイオマスから付加価値の高い機能性材料(食品や医薬品)を創っています。例えば、イカ中骨に含まれるキチンからナノファイバーをウォータージェットで作っています。大学で学んだことを活かして、化学・食品・医薬品メーカーなどで、世界を舞台に技術者・研究者として活躍することを期待しています。技術的な視点だけではなく、社会的・文化的な背景も考えられる力をもつことも重要です。長田光正准教授東北大学で博士号を取得後産総研の研究員、ミシガン大学在外研究員、一関高専の准教授を経て、2014年から現職。専門は、化学工学、超臨界流体工学、バイオマス変換工学水の持つ機能を最大限発揮するために温度、圧力を操作した新たな化学反応場を探求しています未利用水産残渣のナノファイバー化農林水産残渣からの高付加価値材料づくり化学というと色々な薬品を使うイメージがあるかもしれませんが、それを環境に優しい“水”に置き換えることが私たちの目的です。水は、1気圧では、100℃で沸騰しますが、圧力をかけると100℃以上でも液体状態を保ちます。温度、圧力を操作することで水の物性(pHなど)もコントロールできます。つまり、酸・アルカリを使わなくてもpHが変えられます。この“水”を使って、薬品をできるだけ使わずに、様々な化学製品を作る方法を実現します。●超臨界流体固体液体気体圧力22.1 MPa温度374℃0.1MPa(大気圧)100℃0℃超臨界水臨界点超臨界水と高温高圧水とは2004006001197525圧力24MPapHpOH温度[oC]水の物性の温度依存性常温常圧では水の中性はpH=7ですが、温度とともに中性のpHは水だけでも変化します農林水産残渣・バイオマス高付加価値な機能性材料タンパク質(魚鱗)コラーゲンペプチドリグニン(木材)フェノール化合物高温高圧水処理βグルカン(キノコ)βグルカンオリゴ糖キチン(カニ、キノコ)キチンオリゴ糖38

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